スマートファクトリーJapan 2019 データ活用から工場全体の管理まで進むインダストリー4.0

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IoT(モノのインターネット)の活用が進む製造業。機械をインターネットと接続することで人間だけでは不可能なデータの取得や問題の見える化、効率的な製造ラインづくりができるスマートファクトリーに各企業の注目が集まっています。

そんなスマートファクトリーに関する技術・サービスを紹介するイベント「スマートファクトリーJapan2019」が6月5日~7日の3日間、東京ビッグサイト青海展示場で開かれました。来場数速報によると、およそ4万3000人がこのイベントを訪れました。

人手不足、ベテラン社員の引退、稼働率の低下といったさまざまな課題解決にIoTは役立ちます。

今回のイベントにどんな出展があったのかを早速ご紹介していきます!

データの可視化技術はさらに精度を高めている

スマートファクトリー製品が最も得意とする分野にデータの可視化があります。

ラインの稼働率やリアルタイムの在庫状況などのデータを記録し、わかりやすく整理してくれるのがその代表的な機能。詳細にまとめられたデータを分析することで改善ポイントや最適な運用方法が見えてきます。

データを取得しようにも、40年前から使っている自社の機械設備からデータを取得できるのだろうか……。そのような不安も現代の画像認識技術を用いれば払拭可能。例えばコネクシオのメーター読み取りソリューションは、制御盤やアナログメーターを取付式のカメラで撮影し、そのままデジタルデータへと変換してくれます。データ化した情報はウイングアーク1stDr.SumMotionBoardといったデータ集計・加工ツールと組み合わせることでさらに分析が容易になります。同じく画像認識技術をデータ取得に活用しているのがスプリームのMoptar。こちらはカメラで人の動きを記録し、工場内の動線や振る舞いを分析します。その結果効率的なモノ・人員の配置やヒヤリハットの発見が可能になるのです。

デジタル・アナログを問わず、あらゆるデータの取得が可能になりつつあるのが現代のデータ可視化市場だといえるでしょう。

時代は“手にしたデータをどう使うか”のフェーズへ

データの可視化の自由度が高まった現在、重要なのはいかに可視化したデータを活用するかということです。

その手法として代表的なのは必要なデータを分析しやすい形で見せてくれるBIツールを用いること。前述のDr.SumMotionBoardは、DataDrivenManufacturing(客観的なデータに基づいたモノづくり)をキーワードに、在庫状況や良品率などの知りたいデータをグラフやゲージといった見やすい形で確認できるようにしてくれます。厳選された情報だけを一画面で総覧することで今まで気づかなかった課題や改善点が見えてくるはずです。

より初歩的な段階からデータ活用を手助けするサービスを提供しているのがセゾン情報システムズ。同社のSimple Analyticsでは、日本電産株式会社がピックアップした60の質問項目を基に“現場にIoTを導入する体制が整っているか”から判断。導入後は標準分析機能を用いて知るべき情報を抽出し、90日間で成果を出せると銘打っています。

データを集めても活用しきれないという悩みは、IoT導入に着手し始めた企業につきもの。データを可視化した後どう活用するかまで見据えてスマートファクトリーに挑むことが求められます。

スマートファクトリー化は大手・中小問わず進んでいる

ここまでデータ活用にフォーカスしてきましたが、スマートファクトリーの可能性はそれだけに留まりません。

産業用ロボットメーカー大手のファナックのFIELD systemは製造業向けオープンプラットフォームとしてシステムの稼働状況を監視し、「止まらない、止まる前に知らせる、止まってもすぐに直せる」スマートファクトリーを実現します。同製品は修理の手順をアニメーションで案内する「ビジュアルガイダンス」作成など現場での作業を助ける機能も有しています。

隣のブースで展示されていたアマダのV-factoryも製造データの見える化に加え、加工手順や仕様金型のナビゲート機能を搭載。切る、あける、曲げる、付けるなどの作業ごとに最適化された製造支援情報の提供が行われます。

V-factoryのメイン顧客層は30人規模の中小工場とのこと。データを分析するだけでなく、工場全体の機械をつなげ最適化や稼働状況の管理を行う。そのようなスマートファクトリーが、広く日本のモノづくりに導入され始めている証左だといえるでしょう。

終わりに

スマートファクトリーの最先端情報について、イベントレポートの形で紹介してきました。今や工場内のデータをIoTで可視化することは前提として、データ活用や機器の連携を通して最適な製造現場を作り上げることがスマートファクトリー企業のミッションとなっています。

設備稼働率、時間稼働率、良品率などスマートファクトリー化によって改善できる指標は限りありません。まずは自社がスマートファクトリー化においてどのフェーズにあるのか、見直してみることが先決でしょう。スマートファクトリーに代表される第4次産業革命、インダストリー4.0はすでに多くの企業で進み始めているのです。

スマートファクトリーに興味がある方は、このイベントでも登壇されていた旭鉄工の木村社長による講演「1時間で始めるスマートファクトリー」の記事も合わせてご覧ください。スマートファクトリー関連記事一覧はこちらからどうぞ。

参考URL

インダストリー4.0とは? IoTとの違いについても解説┃HITACHI
スマートファクトリー化がなぜ必要なのか、その理想像と越えるべき3つの壁┃MONOist

宮田文机

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