“孤立集落”は「ひとごとではない」 災害時に約500か所の集落が孤立する可能性がある愛知県 山間部の場合

能登半島地震では集落の孤立が相次ぎ、支援が行き届かない状況が長く続きました。

この地方の対策はどうなのか、孤立が想定される現場で取材しました。

能登半島地震では土砂崩れによる道路の寸断などで多くの集落が孤立しました。

愛知県では災害時に迂回路がないなどとして、孤立するおそれのある集落が約500か所、想定されています。

このうち4割以上が集中するのが山間部が多い豊田市です。

市内の北東に位置し長野県や岐阜県と接する稲武地区には約2000人が暮らしています。

10年前には大雪で地区に通じる全ての道路が寸断されて一時孤立状態に。

停電したうえ、復旧のための車も入れませんでした。

この経験も踏まえて豊田市では孤立集落の対策に力を入れています。

中学校に「衛星携帯電話」

(豊田市 防災対策課 深津拓也さん)
「こちらが衛星携帯電話。衛星にアンテナが向いている」

能登半島地震では通信が遮断され、どの集落が孤立しているのかを行政が把握するのに時間を要しましたが、豊田市は全ての中学校区に衛星電話や無線を配備して、基地局が被災しても通信できるよう備えています。

さらに…。

(豊田市 防災対策課 深津拓也さん)
「こちらは外部給電機能が付いているPHV車」

停電になっても車体から電気を供給できるプラグインハイブリッド車。

ガソリンが満タンなら1台で2日ほどは避難所となる学校の体育館やトイレに電気を送ることができ、スマートフォンの充電も可能です。

豊田市は地元のトヨタ自動車から寄贈されたものも含めて、孤立する可能性がある地域などに約50台配備しています。

(豊田市 防災対策課 濱田孝光課長)
「できうることは対応しているが災害は想定外が起こる。いろんなものを用意しているが、本当にこれだけでいいのか。いま一度、今回の地震の検証を踏まえて考えていく必要がある」

危機感を募らせる住民も…

集落に住む人々も危機感を募らせています。

(稲武地区に暮らす 松井徹さん)
「ここに発電機、ここに冷蔵庫、(冷蔵庫の中に)食料1週間分」

松井徹さん(75)の場合、自宅の裏山が急斜面で土砂災害のリスクが高く、自宅には発電機や食料を備蓄しています。

(稲武地区に暮らす 松井徹さん)
「(能登半島地震は)ひとごとではない。改めて自分も、どう逃げたらいいか、どのようにしたらいいか考えさせられた」

稲武地区で半世紀暮らし、愛着をもっている松井さん。

1人で氷のアート「氷瀑(ひょうばく)」を作り、過疎化が進む集落の魅力を知ってもらおうと取り組んでいますが、今回のような災害のたびに「へき地に住む側に問題がある」という意見が出ることについて複雑な思いを抱いています。

(稲武地区に暮らす 松井徹さん)
「いつ(裏山が)崩れてもおかしくない。本当に怖いところ。だけど愛着がある。離れられない。珠洲市や輪島市の人も、きっとそうだと思う」

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