兵庫県三田市議会は、ホームページ(HP)に公開してきた全議員の住所について、大字までの表記にとどめることを決めた。子育て中の議員がプライバシー上の懸念を訴えたのがきっかけだった。県内では、従来通り住所を番地まで公開する議会がある一方、見直す動きも出ている。
三田市議会で声を上げたのは、日本維新の会の福本愛議員(34)。子ども2人を育てる中、HPに詳しい住所を記載することには、立候補前から違和感を抱いていたという。「家庭に子どもだけでいる時間も長いので怖い」と打ち明ける。
詳しい住所の公開について、議会事務局の担当者は「陳情などで市民が議員と連絡を取るために必要だったのではないか」と推測した上で「決定事項として慣例で残っていた」と話す。
松岡信生前議長(67)は「公人だから公開するという感覚だった。当選を重ねている議員ほどそう思っていたのでは」と述べる。会派代表者会議で表記変更に異論はほぼなく、誕生日も年月だけの表記に改めた。
福本市議は「今はSNS(交流サイト)でも連絡を取れる。住所をさらされることがネックとなって若い世代が立候補をためらう可能性もあるので、変わって良かった」と話す。
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総務省は昨年9月、地方議員はHPで自宅住所を掲載しなくても問題ないと通知している。県内の各議会はどうしているのか。
尼崎市議会は2022年5月、プライバシーへの配慮を求める女性議員らの声を受けて、町名までの表記に変更した。芦屋市議会は住所を公開するかどうかは議員の意向を確認して決めるため、非公開の議員もいる。
宝塚市議会は番地や部屋番号まで掲載しているが、現在、見直しの議論が進んでいる。昨年春の選挙で女性議員の割合が26人中14人と半数を超えた。議員から「自宅に人が押しかけるトラブルがあった」と報告があったためという。
明石市議会や神戸市会は住所か事務所の所在地を番地まで載せている。神戸市会事務局は、一部で個人情報の保護を求める声があるとしつつ「市民が議員に接触できるように掲載している」。豊岡市も長年の慣例で住所を番地まで公開する。西宮市は議員控室も選択できるようにしている。
兵庫県議会は議員の意向を聞き、多くの議員が事務所か自宅、または両方を掲載するが、公開していない議員もいる。(橋本 薫)