ドライバー“二刀流”のすすめ 一周回って考えるスコアの整え方/ギアを愉しむ。

ドライバーの“標準長さ”を43.5インチと考える

しかも短いほう(左)がメインドライバーという思考法(撮影/高梨祥明)

今回提案したいのは、ドライバー(以下1W)2本体制“二刀流”のクラブセッティング。現在使用中のモデルとは別に、短めのシャフト(43.5インチ前後)を挿した1Wをもう一本キャディバッグに入れておくというもの。1W1本が14本構成のセオリーとされるが、そこを2本にすることでプレーがもっと楽しく、スコアにより直結するという考え方だ。

43.5インチを用意する目的は、1Wをキャディバッグの中で孤立させないこと。基本的にゴルフは1Wで始まり、パターで終わるものだが、それは1ホールのみでの話であり、18ホールのラウンド全体で考えれば、スタートホールを除いて1Wはパターの直後に打つ。一番遠いように思えて、実は隣り合わせにある関係性なのだ。

つながりのポイントとなるのは“長さ”。短いほうが当然ミート率は上がり、43.5インチ程度が他のクラブとのつながりを隔てないギリギリの長さといえる。1995年に45インチのキャロウェイ『グレート ビッグバーサ』が登場するまで、100年以上にわたって44インチ以下が採用されてきた(1800年代に50インチのホッケースティックのようなクラブでゴロを打っていたとされる記録あり)。そのように考えると、実は45インチ以上のほうが歴史的にはイレギュラーであり、長尺が当たり前となってまだ30年ほどしか経っていないのだ。

飛距離が出せる=リスクが増える

この30年間、1Wは遠くへ飛ばしたいというニーズに応えるため、長尺化の一途をたどってきた。シャフトが長いほどヘッドスピードが上がり、飛距離が伸びる。同時にヘッドを大きくすれば長尺化しても安心感が得られ、慣性モーメントの数値が高くなってボールの曲がり幅も抑えられる。長尺&大型化こそ“飛んで曲がらない1W”というのが、イマドキの思考といえるだろう。

狙った方向に打ち出しやすい“長さ”を探ってみる(撮影/高梨祥明)

しかし、飛距離が出るほどにインパクトでのフェース面の管理がシビアになっていくことも事実。同じフェースの開きでも、キャリーが200ydならフェアウェイの幅に止まるが、250ydならラフに行ってしまう危険性が高くなり、300ydなら林、350ydならOBゾーンに…。つまり飛ばせるほど、インパクトでのフェース向き(打ち出し方向の管理)をしっかりとコントロールする技術が必要となる。

いま話題の「10K」ドライバーも例外ではない。慣性モーメントの大きなヘッドは、フェースの向きに対し、よりストレートにボールを飛ばす特性はある。ただ、弾道自体は真っすぐでも、打ち出し方向が右や左に向いてしまうと、そのまま曲がった方向に行ってしまうということでもある。ギア効果でフェアウェイにボールが戻ってこないため、キャリーが増えるほどラフ→林→OBという代償を支払うことになるのだ。

スコアが整う43.5と45インチ台の使い分け

最大飛距離を追い求めた現代ドライバーとは、90年代初めまでには存在しなかった“ディスタンス系”のユーティリティクラブと言い換えられる。ここ一番で飛ばしたいときには重宝するが、飛距離が出せる分、思った方向には飛ばないリスクもはらんでいる。これは道具云々ということではなく、飛ぶことの宿命ともいえる。

現在、1Wの飛距離300yd前半が当たり前となったPGAツアーでは、3Wがティショットギアとなりつつあり、この長さがだいたい43.5インチ。そう、80年代の1Wと同じ長さ。彼らは大きな飛びが必要ではないホール、曲げたくないホールでは、43.5インチでフェアウェイに運んでいく。

フェースが3Wより高く460cc1Wより低いテーラーメイド「BRNR MINI」は、ティアップが低くて済むので打点のバラつきを抑える効果がある(撮影/高梨祥明)

我々アマチュアも、30年前の標準的な長さ43.5インチをメインに、1Wを考え直してみてはどうだろうか。45インチ台が標準となっている今、43.5インチは“短尺”と感じるかもしれないが、45インチのほうが“長尺”で、他のクラブからすれば異端。3Wでティショットをすることが不安に感じるなら、一層のこと3Wをバッグから抜き、ヘッド体積400cc前後でロフト角11度以上ある過去モデルのヘッドを、43.5インチで使ってみてほしい。ロフト選びさえ間違えなければ、きっと大きな武器になるはずだ。

通常のホールでは“標準”の長さ43.5インチで打ち、ここ一番で飛ばしたいホールでは多少のリスクを承知のうえで、最新の“ディスタンス系”ユーティリティ1Wを握る。高慣性モーメントヘッド全盛の今、それくらいの感覚が一周回って必要なのではないだろうか。(高梨祥明)

1Wは「最新モデル1本が当たり前」というセオリーを疑ってみる(撮影/高梨祥明)

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