奨学金返済支援制度 人材確保へ企業の代理返還広がる

■5年最大200万円、完済支援企業も

給与が伸び悩む一方、失われた30年で2倍超に膨らんだとされる大学の学費。日本学生支援機構の2020年度調査によると、昼間部の大学生の49.6%と約半数が奨学金を受給。新社会人の大きな重圧になっているのは明らかで、返済支援に乗り出す動きが広がる。


奨学金プラットフォームを運営するガクシーの奨学金に関する実態調査で、奨学金を受給する学生・保護者に奨学金の種別を問うと「貸与型」が79.2%に対し、「給付型」は33.1%にとどまる。うち61.5%は日本学生支援機構の奨学金を受給し、なかでも「日本学生支援機構の貸与型」が51.2%と突出する。


給付奨学金の知識をみると、「給付型が多数あることを知っていた」は29.1%と3割に届いていなかった。「給付型は知っていたが多数あることは知らなかった」が32.8%と上回り、「給付型があること自体を知らなかった」が16.5%を占めるなど、奨学金に対する理解不足は大きい。また奨学金の印象を尋ねると、奨学金受給者の多くが返還が必要な貸与型なのを反映し、「借金なので怖い」が48.4%で最多となっている。


奨学金返還の重圧を軽減することが人材確保・定着に繋がるとして、地域を問わず企業が支援に乗り出している。

DXソリューション事業のCREVAS GROUP(東京都中央区)は11月13日、20代の社員に対して最大5年間奨学金を全面補助する「みらサポ制度」を導入すると発表した。新卒・中途入社は不問で、20代の社員が返済する奨学金を会社が3年間全面補助。3年経過後に面談を行い、2年間の継続補助を実施するか、長期貸付とするかを決定する。


松屋フーズホールディングス(東京都武蔵野市)は24年1月から、奨学金返済支援制度の運用を開始。グループ所属の正社員・無期雇用パート・アルバイトが返済する国内の全ての貸与型奨学金が対象で、1人当たりの返済支援総額は元利合計で最大200万円、最大5年間全額を支援する。


アオキスーパー(愛知県名古屋市)も24年3月から、奨学金返還制度を導入する。日本学生支援機構から貸与型奨学金を受けている新卒・中途で入社した正社員に対し、入社後10年間または35歳の誕生月までの間、最大で180万円までを会社が代理返還を行う。


製造コンサルティングの平山(東京都港区)は24年4月新卒社員から、奨学金を5年返還支援する制度を導入。日本学生支援機構の貸与型奨学金が対象で、キャリア総合職などは1万円、ファクトリー職などは5千円を毎月代理返還する。


支援が手厚いのは、不動産情報サービスのラルズネット(北海道函館市)だ。学歴や新卒・中途の差、年齢、金額の多寡、返還期間を問わず、完済まで会社が奨学金を代理返還。支援月額は勤続10年目まで最大1万円、11年目からは毎月の返済額を全額負担とするなど、長期勤続にインセンティブを設けている。

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