「毎年いくらまでなら大丈夫ですか?」孫に積極的にお金を使いたい70歳女性の実情

現在夫と二人で年金暮らしをしているKさん。3人の子どもは独立し、6人の孫に恵まれました。老後は多くは望まず、ご自身や夫が健康で今と変わらない生活を送ることを望んでいます。

元気なうちは子や孫のためにお金を使っていきたいそうですが、毎年いくらまでならお金を使っても大丈夫なのでしょうか? 家計の実情と照らし合わせて解説していきます。


【相談者プロフィール】

性別:女性

年齢:70歳

職業:無職。年金生活

家族構成:夫と2人暮らし

夫(72歳) 無職。年金生活

住居:戸建ての持ち家(ローンなし)

【子どもの家族構成】

長男(46歳):長男配偶者(41歳)、孫2人(9歳、7歳)

次男(44歳):次男配偶者(42歳)、孫2人(7歳、3歳)

長女(42歳):長女配偶者(42歳)、孫2人(13歳、10歳)

【現状の収入】世帯年金額:465万円(年金額手取り:410万円)

夫年金額:237万円

Kさん年金額:228万円

【世帯の支出額の目安】

支出額合計:年間355万4,000円

生活費・娯楽費合計:年間276万円

(内訳)

食費:月8万円(年間96万円)

日用品:月3万円(年間36万円)

水道・光熱費:月4万円(年間48万円)

通信費:月3万円(年間36万円)

夫ゴルフ代:月5万円(年間60万円)

住居関連費合計:年間9万円

(内訳)

火災・地震保険:年1万円

固定資産税:年8万円

車輛費合計:年間37万5,000円

ガソリン代:月1万円(年12万円)

自動車税:年3万5,000円

車輛保険:年10万円

駐車場代:月1万円(年12万円)

※車の運転は夫80歳までを予定

保険料合計:年間32万9,000円

(内訳)

夫名義

医療保険:年18万円

がん保険①(夫婦型保険):年4万1,000円

がん保険②(夫婦型保険):年1万7,000円

がん保険③:年2万2,000円

ゴルフ保険:年1万5,000円

Kさん名義

医療保険①:年2万6,000円

医療保険②:年2万8,000円

【世帯の資産状況】

預貯金:2,500万円

Kさん名義の終身保険:死亡保障800万円(払済)

残りの人生はどんな暮らしを望みますか?

Kさんにこれからどんな生活をしたいかを伺うと「特別な贅沢をしたいとは思いません。今までと変わらない生活ができれば幸せです。そして、子どもや孫が困った時にはサポートしてあげたいし、何か必要なモノがあれば買ってあげたいです」とのこと。

Kさんは、高校生の時にお父様を亡くし、生活に大変苦労しました。大学進学も希望していましたが叶いませんでした。そんな経験もあって、「子や孫のために」という思いが人一倍強いようです。

では、Kさんの家計はどのような状況かを確認しましょう。Kさんと夫の年金額(国民健康保険料や介護保険料、税金を引いた年金額)は410万円で、支出額は年間約360万円です。夫婦2人で貯蓄を取崩すことなく年金だけで生活ができる上に、年約50万円の貯蓄ができる黒字家計です。今後、リフォームや車の買い替えも希望されていますが、貯蓄から賄っていくことが可能です。

Kさんに子や孫に今現在どのくらいお金を使っているか?また使い続ける予定か?を聞いてみました。

「今現在は帰省の際に日用品や食料品をたくさん買って持たせる他、お小遣いも渡しているので年50万円くらいは使っているのではないでしょうか。今後も自身が80歳くらいまでは同じようなイメージでいます」とのことでした。

リタイア後の生活は、資金を取り崩すペースが大切

もし仮にKさんが年間50万円をこれから10年間、合計500万円使ったとしたら、10年後のKさんの家計状況はどうなっているのでしょうか。

70歳から80歳までの10年間に、家のリフォームに200万円と車の買い替え300万円、家電買い替え50万円を予定しています。それに加えて、子や孫に合計500万円使うとなると、10年後の家計の貯蓄額は約1,950万円となります。

10年後のKさん80歳時に、約1,950万円の貯蓄と夫婦2人で年金約400万円があれば、子や孫に年50万円使うことは実現可能でしょう。しかし、車の買い替えの年(Kさん夫73歳・Kさん71歳)には年間収支マイナス約250万円、リフォームと家電買い替えの年(Kさん夫75歳・Kさん73歳)は年間収支マイナス200万円となります。ご自身のことにお金が必要な時は、それを第一優先とし、子どもや孫に使うお金で調整が必要になりそうです。

まずは自分たちのゆとりある生活を確保した上で、残った資金で「子や孫のために」できる範囲で援助をしてあげるようにしましょう。リタイア後の生活は、資金を取り崩すペースが非常に大切です。

将来必要になる介護資金も忘れずに

意外と見落としがちなのが介護資金です。公益財団法人生命保険文化センターが行った「生命保険に関する全国実態調査(2021年度)」によると、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計は平均74万円、月々の介護費用は平均約8.3万円(年間約100万円)で介護期間は平均約5年とあります。

一時的な費用74万円+(介護費用月8.3万円×12ヵ月×5年)=572万円となり、介護費用は平均約600万円かかるという計算になります。これはあくまで平均額のため、どのような介護サービスが必要かによって、費用は大きく異なります。

介護にかかる費用もしっかり見積もっておい方が良いでしょう。

次世代のために財産整理を

最後に、子や孫のことを思うのであれば、忘れずにやっておいてほしいことがあります。それは、Kさんの夫やKさんに万一のことがあった時に、次世代が困らないように財産の整理をしておくことです。

自宅不動産は誰に託したいのか、取引のある銀行はどこなのか、生命保険はどの保険会社で契約しているのか…。自分たちの財産をどのように遺したいのかを生前に意思表示しておいてください。親世代のKさん夫婦から次世代へ伝えておくことで、要らぬトラブルを避けられます。

エンディングノートや遺言を活用する方法もあります。これらの方法を利用するのであれば、適切な判断ができる元気なうちに早めに準備することをおすすめします。

子や孫を大切に思うなら、資産を取り崩すペースが重要

一度きりの人生、自分の好きなお金の使い方ができることはとても幸せなことです。このようなお金の使い方ができるのは、これまでKさん夫婦が築き上げた財産があるからです。

せっかく築きあげた資産だから…と使わないままでは意味がありませんが、使い過ぎも避けたいですよね。資産を取り崩すペースというのは、意外と自分では分からないものです。

贈与まではいかない今回のケースでも、事前にライフプランを作成し、自身の目標のためにいくら資産を取り崩すのかを把握した上で、残りの資産を計画的に使うことができれば家族も安心でしょう。

© 株式会社マネーフォワード