障害者、アニメ作画奮闘 「かいじゅうムベンベ」 2月、水戸で上映 「初めての経験、わくわく」

背景を担当した吉沢慎蔵さん(中央)と原作者の樫村彩乃さん(右)、「ひとは」代表の加藤里子さん=水戸市根本

心身に障害のある人たちが中心となって作画したオリジナルアニメ「かいじゅうムベンベ」が2月、茨城県水戸市内で上映される。少年が見つけた怪獣のうわさが広がり、町中がパニックに陥るという物語。キャラクターデザインを手がけ、全身の筋肉が次第に衰える難病筋ジストロフィーを患う茅根彩斗さん(21)は「初めての経験でわくわくした。みんなが楽しめるように描いたので見てほしい」と話している。

制作はアートセラピーをベースとした絵画教室「あとりえず~む」(同市根本)。同教室が毎年取り組む事業の一環で、今回が10作目となる。同教室を主宰する事業者「ひとは」が運営する福祉サービス事業所「のっぱらの扉」利用者も協力。原作は同講師の樫村彩乃さん(35)が手がけた。同社によると、制作は2022年夏に始まり、1月中に完成予定という。

アニメ制作は教室の講師2人が主に取り組んでいたが、うち1人が体調不良になったため、教室の受講生らがサポートに乗り出して「協働」が実現した。同社の加藤里子代表(62)は「お互いに助け合っている形。本当の意味でバリアフリー」と意義を語る。

物語はその後、ムベンベを恐れる人々の前に現れた旅人の「見たことがないのになぜ怖がるの?」との一言で、みんなでムベンベを探すという展開を見せる。

キャラデザイン担当者のうち、主人公やその家族などを担当した茅根さんは、作画に約10カ月を要した。うち7カ月間は入院生活を送りながら、1人きりで完成にこぎ着けた。筋力が衰えて紙の向きを変えるだけで疲労が蓄積する中、少しずつ描き上げたという。

背景を担当したのは、脳性まひの吉沢慎蔵さん(19)。資料画像をズームしながら隅々まで目を通し、細部の表現もこだわったという。樫村さんから細かく指定されたが、「ハードルが高いと燃える性格。(注文が多いのは)うれしかった」と笑顔。ユニークな線が持ち味で、無機質な都会のビルは、四角いスタンプで表現した。

このほか、作中には生徒と利用者が思い思いに描いた数十匹のムベンベが登場し、画面をにぎわせる。

上映は2月18日、会場は同市千波町のセキショウ・ウェルビーイング福祉会館(県総合福祉会館)。当日は寸劇やアフリカ音楽のコンサートも実施する。チケットは大人2千円、子ども1500円。購入は専用ページ(https://hitoha.base.ec/categories/5459866)から。問い合わせは同社(電)029(353)8554。

アニメ「かいじゅうムベンベ」の1シーン(ひとは提供)
茅根彩斗さん

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