誰もが使いやすい職場づくりにむけて~職場のユニバーサルデザイン~

皆さんは「ユニバーサルデザイン」という言葉をご存じでしょうか?
ユニバーサルデザインは、文化・言語・国籍や年齢・性別・能力の違いに関わらず、できるだけ多くの人が利用できることを目指したデザインのことです。
1985年にアメリカの建築家ロナルド・メイス氏によって提唱されました。
似た言葉としては「バリアフリー」があり、耳にしたことのある方も多くいらっしゃると思います。
バリアフリーは障がい者や高齢者にとっての「障壁(バリア)を除去する」といった意味ですが、ユニバーサルデザインは、誰にとっても使いやすいデザインを最初から使うことで「障壁を作らない」といったイメージです。

皆さんが日常的に触れているユニバーサルデザインとしては、シャンプーのボトルが有名です。
シャンプーボトルのヘッドや側面の印によって、視覚的にも触覚的にもシャンプーのボトルであることがわかります。
また、ユニバーサルデザインは製品だけに限りません。
東京オリンピックの競技ごとに使われていたピクトグラムもユニバーサルデザインです。
国籍や年齢、言語に関係なく、視覚的にどんな競技なのか伝える、つまり、ピクトグラムは「情報」をユニバーサルデザインとして伝えるものです。

最近では、職場でもユニバーサルデザインが注目されています。

なぜ職場でユニバーサルデザインが注目されているのか

職場におけるユニバーサルデザインが注目されている理由としては、少子化労働人口の減少があげられます。
少子化が進む中で労働人口が減ってきており、働き手を確保するためには国籍や性別、年齢、障がいの有無にかかわらず、優秀な人材を探す必要があります。
しかし、言語や年齢などによって、従来の環境やシステムでは十分に力を発揮できない場面もあるというのが現状です。
それを解決する方法の一つがユニバーサルデザインです。

また、ユニバーサルデザインの導入により、現在働いている従業員の過ごしやすさや生産性の向上が期待できます。

ユニバーサルデザインの7原則

ユニバーサルデザインには、前述のロナルド・メイス氏が所長を務めたノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターが定めた7つの原則があります。
職場でユニバーサルデザインを導入する際も、この7原則を意識して取り入れてみるといいでしょう。

①誰でも使える(Equitable use)

段差は、車いすを利用している人の障壁となるのはもちろんですが、小さな子供や高齢者が転倒する原因にもなります。
スロープやエスカレーター、エレベータなどが誰にでも使いやすいデザインとなります。
また、労働者の中には家庭の事情で出社が難しい人もいるため、テレワークを導入することもこちらに該当します。

②柔軟性がある(Flexibility in use)

スマートフォンやパソコンの画面の設定で、背景や文字の色やサイズを選ぶことができます。
これは人によって見やすさが異なるため、その人に合わせることのできる柔軟性があるデザインといえます。

③直感的に使うことができる(Simple and intuitive)

iphoneに説明書がなく、直感的に操作ができる仕様であることは有名です。
他の事例としては、直感的に行きたい場所に行けるように書かれた、病院などの廊下にある色分けされた矢印などがあります。

④情報を手に入れやすい(Perceptible information)

情報は文字だけではなく、視覚情報でいえば言語、色や形などで構成されています。
ほかにも聴覚情報や触覚情報、嗅覚情報などがあります。
事例としては、「電車の優先席を色で区分けする」「車いすや妊婦のピクトグラム使う」など、文字の読めない人でもわかりやすく表示しているものがあります。

⑤安全性がある(Tolerance for error)

「安全性がある」とは、少しのミスで事故につながらないという意味です。
例えば、電子レンジの使用中に扉を開けると、運転が止まります。
また、裁断機の中には両手でボタンを押さないと裁断できないものがあり、こちらは誤って指を切り落とさないためのデザインとなっています。

⑥少ない労力で使うことができる(Low physical effort)

長時間の使用に耐えうる、力の弱い人でも使うことができるデザインのことです。
蛇口のスピンドルを回すには力を必要としますが、レバー式であれば最小限の力で利用できます。
また、最近では照明のスイッチのボタンが大きいものが増えており、指でボタンを押すのが難しい人でも手全体を使って押すことができます。

⑦必要な空間が確保されている(Size and space for approach and use)

前述の照明のボタンは使いやすい大きさが確保されているため、このデザインにも当てはまります。
優先駐車スペースが大きく作られているのも、車いすを利用する人が乗り降りするのに十分なスペースを確保しているためです。

職場でユニバーサルデザインを取り入れる第一歩

いざ職場でユニバーサルデザインを取り入れようと思っても、何から始めればいいかわからないこともあります。
ユニバーサルデザインを始める第一歩としておすすめなのが「困っている人の声に耳を傾けること」です。
駅や病院と違い、職場は特定の人々が利用する場所です。
そのため、優先してアプローチすべき場所がわかりやすいことが特徴です。
例えば、高齢者の多い職場であれば、段差をなくすことや仕事で使う製品をより少ない力で使えるものに切り替えることなどが考えられます。
ダイバーシティが重要視される昨今ですので、多様な人材の確保にむけてユニバーサルデザインの導入を始めていきましょう。

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