新幹線ストップ直前に異変 乗客「外でポール状のものが落ちた」すぐ窓ガラス割れ停車 脱線したように車体が傾き、ガタンガタンと大きい音…パッと電気消えて蒸し暑く 感電の現場は破裂音、何度も「ボン!」

新幹線の路線から地上へ避難する乗客ら=23日午後1時ごろ、さいたま市中央区

 東日本を結ぶ鉄道の大動脈が突然止まった。架線トラブルによる停電で、埼玉県さいたま市中央区を走っていた新幹線が立ち往生し、乗客は線路に降りて避難した。さらに、復旧に当たっていた男性2人が感電したとみられ、病院に搬送されるという事故も発生。東北、上越・北陸新幹線は終日運休し、利用者は想定外の足止めに困惑した。

 23日午前、さいたま市中央区の新幹線線路内では、停電の影響で北陸新幹線金沢発東京行き上り列車(12両編成)が動けなくなった。乗客359人は、3時間ほどにわたる立ち往生の末、駆け付けた消防や救急隊らによって救出された。JR大宮支社によると、乗客に体調不良者やけが人はいなかった。

 現場はJR埼京線北与野―与野本町間付近。列車が停車していた付近では、列車に電気を供給するトロリ線と、線がたるまないように張られた吊架(ちょうか)線を結ぶハンガーが切れ、トロリ線とみられる電線が大きく垂れ下がっていたのが確認できた。乗客らは列車から非常脱出はしごを使って線路まで降り、付近に備え付けられた線路メンテナンスなどの際に使用する階段を使って地上まで避難した。同支社職員らは、与野本町駅まで退避した乗客らにおにぎりや飲み物などを配布したという。

 乗客で富山市の堀井直孜さん(80)は「こんなことがあるのか」と驚きを隠せない様子で語った。妻のよし子さん(74)は停車した当時について「ガタンガタンと大きい音がして、そのうち電気がパッと消えた」と振り返った。

 2人は能登半島地震を経験しており、停車直後は不安がよぎった。水洗トイレはあるが、電気が使えないため流すことができなかったほか、換気もできなかったため蒸し暑い環境が続いたという。よし子さんは「先日の地震に続いて生まれて初めての経験でびっくりしたが、今はけがもなく安心した」と話した。

 10号車に乗っていた金沢市の女性(34)は、列車が停車する前の異変を目撃していた。「列車走行中に窓の外からポール状のものが落ちてくるのが見えた」とし、その直後に二重の窓ガラスの外側がクモの巣状に割れ、列車が停車したという。「(車体が)脱線したように傾いて、周りの乗客はざわついていた。防ぎようのない事故かもしれないが、もう少し点検などをしてくれていたら…」と語った。

 午後に起きた感電事故では、現場の近くに住む50代の男性が家にいる時、「ボン!」という破裂音が聞こえ、数分たってから再び破裂音が数回聞こえたという。「家の窓は閉め切っているが、大きく聞こえた。なんの音だろうと思ったが分からなかった」と不安そうに話していた。

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