「信頼回復したい」青森県内ダイハツディーラー 社員も当初混乱、顧客に向き合う

車検などの通常業務を続けながら顧客の問い合わせに対応する青森ダイハツモータース青森石江店=20日

 自動車の大量生産に必要な「型式指定」の認証申請で不正が発覚したダイハツ工業で先月、全車種出荷停止が決まってから1カ月余り。青森県内10店舗で同社の車を扱う青森ダイハツモータース(高橋勉社長)では、不安を抱く県内顧客の対応に追われた。新車納車をためらう客が出る一方、一部顧客からは励ましの声も寄せられ、スタッフらは「信頼を回復したい」と日々の業務に向き合う。

 「新車の営業、販売もできない、テレビCMも流れない…。非常に窮屈な思いをしながら商売をしなければならなかった」。同社販売支援部の小笠原淳史部長は、先月20日の第三者委員会の報告書発表直後を振り返る。他社ブランドを含め64車種で不正が確認されたという事態を同社社員が知ったのは、報道とほぼ同じタイミング。突然の発表に動揺が広がる中、社員らは顧客への説明に当たった。

 出荷停止を受け、各店舗には厳しい声が相次いだ。「裏切られた」「自分の車は大丈夫なのか」「新車を買ったが、返した方がいいのでは」。同社青森石江店の宮本明店長は「社員もお客さまも『ダイハツは大丈夫なのか』という不安を抱えた者同士で向き合うような状態だった」と当時の混乱した状況を説明する。

 同社では、新車を購入した顧客の一部から納車を保留またはキャンセルしたいといった要望があり、それぞれ希望に応じて対応。県内顧客に向けた謝罪の文書は、ダイハツ工業本社が作成した文書を基に、青森ダイハツの高橋社長名で書き改めてから送付した。

 今月20日時点で、各店舗での新車の販売は停止状態だが、車検などの整備や顧客からの相談対応のため業務は継続している。新車を購入した顧客の大部分は予定通り納車を待ち、車検の予約に関しては、同社の全店舗でキャンセルは1件も出ていないという。

 同店店舗営業課の和田直之さんは「新車の営業ができないのはつらい。正直、心が折れるかと思った」と胸の内を語る。それでも、顧客からの励ましの声に支えられ、業務を続けているという。

 小笠原部長は「今回の問題で顧客に与えた影響は計り知れない。当社としてはその全てを受け入れ、県内の顧客に向き合っていきたい」と話した。

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