弘南鉄道(青森県)、レール摩耗を3年間ほぼ未測定 運輸局が改善指示「保守管理体制が脆弱」

昨年8月6日に弘南鉄道大鰐線で脱線した下り列車=大鰐町宿川原

 昨年夏以降、脱線事故やレール摩耗により長期運休が相次いだ弘南鉄道(本社青森県平川市)が少なくとも過去3年間、鉄道施設の定期検査の際にレールの摩耗をポイント(レールの分岐点)以外は計器で測定せず、専ら目視で確認していたことが23日、国土交通省東北運輸局への取材で分かった。同運輸局は同日、同社に7項目の改善を指示した。

 運輸局の担当者は取材に対し「現場係員の経験が浅く、現場責任者が不在で、専門的知見を持つ管理職もいない。保守管理体制が脆弱(ぜいじゃく)」と厳しく指摘した。運輸局は、改善されなかったり再び違反があった場合は、鉄道事業法に基づく改善命令を行う。今後1カ月間に行った対策を2月22日までに報告するよう求めた。

 同法に基づく保安監査は昨年12月13~15日に行われ、年1回の定期検査を過去3年分調べた。その結果、レールが本来なら交換基準に達していたにもかかわらず、目視の結果「適合」と判定したことなどが判明。ポイントは計器で測定していたが、限度を超す摩耗が見つかったのに補修しなかった箇所もあった。

 目視のみの確認について、同社の保線担当者は運輸局に「これが自社のやり方」と回答したという。運輸局担当者は取材に「新品のレールなら分かるが、ある程度摩耗したレールを測定しないのは現実的でない」と話した。

 運輸局は、他の鉄道事業者の研修などに係員や管理職を積極的に参加させるよう指示。ホームとレールの間隔や高さが合っていない駅として弘前東高前、弘前学院大前、千年、義塾高校前、石川、鯖石、津軽尾上、平賀の8駅を挙げ、速やかな改善を求めた。

 ほかにも「レールの調整や再測定の結果を記録していない」「冬期間に列車の揺れの測定や線路巡視をしていない」などと指摘した。

 昨年8月の大鰐線(大鰐-中央弘前)脱線事故は、レール摩耗の見落としが事故原因の一つと指摘されている。同社の成田敏社長は「運輸局からの改善指示を着実に実施し、安全運行とお客さまの信頼回復に向け努力いたします」とコメントした。同脱線事故では大鰐線が17日間運休。約1カ月後には大鰐線と弘南線(弘前-黒石)で基準を超すレール摩耗が見つかり、昨年12月8日に全線再開するまで約2カ月半を要した。

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