「地方公務員」人手不足…“なりたい職業”ランキング上位なのになぜ? 専門家が解説

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。1月18日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「地方公務員の人手不足」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。

※写真はイメージです

◆地方公務員の採用試験倍率が過去最低

2022年度の地方公務員の採用試験の倍率が5.2倍となり、過去30年間で最低となったことが総務省のまとめで分かりました。対象は、全国の都道府県、政令指定都市、市区町村の事務職や技術職などの職員です(※教員は含まない)。少子化に加え、待遇などへの不満から受験者数が減ったことなどが要因とみられています。

ユージ:地方公務員になりたい方は、実際に減っているのでしょうか?

塚越:例えば就職氷河期と言われる世代が新卒だった1999年度は倍率が14.9倍なので、それに比べると競争率が下がっています。電子データで統計が残る1994年度以降だと、2019年度の5.6倍が一番低かったのですが、今回は5.2倍とそれ以上に低い倍率になっています。

また、毎日新聞が2023年11月におこなったアンケートによると、2023年度に実施した職員採用試験で、47都道府県のうち大阪府と兵庫県以外の都道府県では「採用予定数割れ」が生じました。特に土木や獣医といった専門職での採用枠が、予定数に達していないということです。

実際、アンケートでは全体の8割にあたる37都道府県で、2019年度から採用予定数割れの職種区分が拡大しているということです。先ほど述べた土木、獣医、林業、建築、電気といった専門職が厳しく、募集しても応募者がいない・少ないといった状態が拡大しているということです。以前、こちらのコーナーで自治体の人材不足についてお話ししましたが、それと同じことですね。

他の自治体や民間企業に流れる「採用辞退」も多く確認されています。こうした状況で、すでに山梨県、和歌山県、沖縄県では行政サービスに支障が出ているということで、今後はその他の都道府県にも波及するのかなと思います。

◆「なりたい職業ランキング」では上位なのに一体なぜ?

ユージ:地方の苦しい実情が浮き彫りになっています。僕の記憶だと公務員って、子どもがなりたい職業ランキングで上位にあったと思うのですが、いかがですか?

塚越:不況の時代は「手堅い公務員が人気」と言われたりもしますよね。実際、LINEとYahoo!が2023年11月に中高生男女およそ1,000人に「なりたい職業」や「その理由」について調査したところ、高校生の男女・中学生男子で「国家公務員・地方公務員」が1位でした。女子中学生でも3位と、非常に人気な職業です。理由は「安定している」が強く、他に「地域・地方に関わる仕事がしたい」というものです。なので現在も人気の職業ではあります。

ユージ:公務員になりたい人が多いのに、なぜ人手不足ということが起こってしまうのですか?

塚越:公務員不足の主な要因としては、やはり少子化です。そもそも受験者の母数も減少しており、特に地方は若者が少なく「東京の大学に出て、そのまま東京で就職」というコースもあります。

あとは採用試験の科目が多くて準備が大変です。民間企業に比べて採用時期が遅いので、民間就職に流れるという要因もあります。また、安定はしているのですが、民間企業ほど給料が上がる幅が少ない、という点も考えられます。

言い方は悪いですが、簡単に言えば大学生にとって公務員は「コスパが悪い選択肢」になっているのかなと思います。学生を見ていて感じるのは、安定はほしいけど、公務員試験に力を注ぐことの「コスパ」を考えると、「民間でいいか……」ということになる。

採用が遅く、試験に落ちたら(その後の就職活動が大変になる)と考えると不安になる。同時に、公務員志望にかけられるだけの「夢」がない。もっといえば、「国のために」というモチベーションが上がってこない、という要因も多少なりともあるかと思います。

◆“なり手離れ”を防ぐためにできること

ユージ:塚越さんは、地方公務員の”なり手離れ”を防ぐために、どのようなことをすれば良いと思いますか?

塚越:実際に都道府県や自治体が取り組んでいることとしては、仕事についての情報提供の強化や、学生向けインターンシップの開催、あるいは社会人経験者向けの採用枠の設定などをおこなっています。私が勤務する大学でも、学生の公務員インターンシップ制度があり、学生に興味を持ってもらうためにも重要なものだと思います。

あとは民間との併願をしやすくするなど、こういう状況ではさまざまな採用設定も変更する必要があるかなと思います。自治体の実際の取組みとして、YouTubeの活用や職員のインタビュー記事を掲載したりしていますが、それだけだとなかなかアクセス数が稼げません。例えば、どうすればアクセス数を上げられるか? といった企画をYouTubeでおこなうとか、多少批判されてもやれることはやってみるのもいいかと思います。

他にも、育休制度や週休3日制度、リモートワークなど、民間企業で進む働き方改革を、公務員が積極的に取り組むということも必要です。こういう時代に、手堅い・安定以外の視点をいかに供給できるかが重要になってくると思います。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ

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1月18日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2024年1月26日(金) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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