【連載コラム】第48回:個人的に意外だったマウアーの殿堂入り「一発当選」 次回はついにイチローが登場

殿堂入りを果たしたマウアー ©Getty Images

日本時間1月24日、2024年度のアメリカ野球殿堂入り投票の結果発表が行われました。通算477本塁打の名三塁手エイドリアン・ベルトレイ(95.1%)、ロッキーズ一筋の強打者トッド・ヘルトン(79.7%)、首位打者3度の天才捕手ジョー・マウアー(76.1%)の3人が当選ラインの得票率75%をクリアして殿堂入り。一方、通算422セーブの剛腕ビリー・ワグナー(73.8%)はあと5票足りず、今回も殿堂入りを逃しました。

有資格初年度での殿堂入りが確実視されていたベルトレイ、前回の投票で得票率を72.2%まで伸ばしていたヘルトンについては、私自身もほぼ間違いなく殿堂入りするだろうと思っていましたが、ベルトレイと同じく有資格初年度だったマウアーの「一発当選」は意外でした。捕手史上唯一となる3度の首位打者を筆頭に、2009年ア・リーグMVP、オールスター・ゲーム選出6度、シルバースラッガー賞5度、ゴールドグラブ賞3度といった輝かしい実績を誇る一方で、2123安打、143本塁打、923打点など、いわゆる積算系のスタッツが殿堂入りの基準には届いていないと思っていたからです。

「一発当選」を果たした捕手は、ジョニー・ベンチ、イバン・ロドリゲスに次いでマウアーが史上3人目。データサイト「ベースボール・リファレンス」が算出している総合指標WARを見てみると、ベンチが75.1、ロドリゲスが68.7を記録しているのに対してマウアーは55.2にとどまっており、ほかの殿堂入り捕手と比べてみても、6年かかったゲーリー・カーター(70.1)、2年目で殿堂入りしたカールトン・フィスク(68.4)やヨギ・ベラ(59.5)、4年かかったマイク・ピアッツァ(59.5)らを下回っています。殿堂入り捕手の平均WAR(53.7)を上回っているため、殿堂入りに値する選手だったことは否定しませんが、「一発当選」はやや過大評価のような印象も受けます。

マウアーがこれだけの支持を集めたのは、ツインズ一筋のフランチャイズ・プレーヤーだったことが大きいと思います。フランチャイズ・プレーヤーというだけでなく、マウアーはミネソタ州セントポール出身のご当地選手。地元チームからドラフト全体1位指名を受け、そのチームで15年以上プレーした選手が殿堂入りするのは北米4大スポーツで初めてのことだそうです。また、SNSの普及により、批判を恐れて無難な投票を行う記者が増えていることもマウアーにとっては追い風となったのでしょう。

さて、次回(2025年度)の殿堂入り投票では2009年にマウアーと熾烈な首位打者争いを繰り広げたイチローがついに登場します。メジャーデビューが27歳と遅かったにもかかわらず、36歳まで10年連続でシーズン200安打、オールスター・ゲーム選出、ゴールドグラブ賞を継続し、2004年には史上最多となるシーズン262安打を記録。打率.311、3089安打、509盗塁など、通算成績もリードオフマン型の選手としては申し分なく、有資格初年度での殿堂入りが確実視されています。

日本人野手のパイオニアであること、ステロイド全盛のパワー野球だった時代に新たな風を吹き込んだことなど、スタッツ以外の部分を評価する声もあり、米メディア「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール記者は「私の見解では満票になるべきだ」と主張。野手史上初の満票となるのか。満票でなければ、どれくらいの得票率になるのか。次回の殿堂入り投票がとても楽しみです。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

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