被災者のつぶやき、能登支援に生かせ 神戸大の学生救援隊、原点の地で足湯ボランティア

赤ちゃんから祖母まで3世代に足湯する神戸大学の学生。会話を楽しんだ後、祖母が「笑ってんとやっとれん」とつぶやいた=20日、石川県七尾市(撮影・笠原次郎)

 1日に発生した能登半島地震の被災地で、神戸大学「学生震災救援隊」のメンバーが足湯のボランティアを始めた。2007年に能登半島で起きた地震時に足湯を始めた救援隊。その後も代々のメンバーが各地で被災者の体を温め、心を癒やしてきた。原点とも言える能登半島で、今回も被災者たちのつぶやきに耳を傾け、学生自身にできることを考える。

 救援隊は阪神・淡路大震災が起きた直後の1995年1月に発足。神戸だけでなく、その後の災害被災地にも足を運び、ボランティア活動に取り組んできた。2007年に起きた能登半島地震では「被災地NGO恊働センター」(神戸市兵庫区)の支援を受けて新潟県の学生らとともに「中越・KOBE足湯隊」として避難所などで初めて足湯を実施した。

 その後も、先輩から後輩へと引き継ぎ、東日本大震災や各水害被災地などで足湯をしてきた救援隊。新型コロナウイルス禍で活動が難しくなり、いったんノウハウの伝承は途絶えたが、07年時に大学院生として足湯ボランティアをした藤室玲治さん(49)が特任准教授を務める福島大の学生に教わり直し、昨年から東北で活動を再開していた。

 今回の能登半島地震では元日夜からミーティングを始め、発生直後から支援を続けている同センターなどのコーディネートで、藤室さんと学生8人が1月20、21日に被災地に入った。

 ◇「まさか元日に…」感謝のコンペイトー

 「まさか元日に地震がくるとは思わなかった」

 石川県七尾市の中島小学校避難所。避難している長田和美さん(69)は足を湯につけ、2年生の並川直人さん(22)に手をもまれながらつぶやいた。

 長田さんは地震後の20日間で体重が5キロも落ち、普段から寒さを感じやすくなったという。自衛隊が屋外に風呂を提供しているが、「湯冷めするかと思って、お風呂にあまり入ってないの。だからせめて足湯でも入りたいなあと思って」。

 ただ、会話はあまり続かない。「おうちは大丈夫でしたか?」。並川さんが切り出した。

 「駄目になりました。リフォームしようと言ってたんだけど、壁は落ちるわ、ガラスは割れるわ。まあ、ひどかった」

 並川さんにとっては初めての足湯ボランティアだった。「被害を聞いて良かったのか」。長田さんを見送りながら悩んでいると、戻ってきた長田さんが「はい、ありがとう」と並川さんの手のひらにコンペイトーを乗せてくれた。

 活動後の夜のミーティングでは、自衛隊の風呂に入りにくい避難者がいることを報告。大学生と交流した住民の一人、加賀淳一さん(48)は思いを語った。

 「中島町の人は助けられることを恥と思っている。だからほかの町民にはしゃべらない。でも皆さんには言うんです。全然関係ないから。そのつぶやきを聞いて支援を考えるってすばらしいなと思う」

 救援隊メンバーは2月にも被災地を訪れる予定だ。 (高田康夫)

© 株式会社神戸新聞社