澤野弘之、TOMORROW X TOGETHERとコラボ実現!韓国カルチャーに「カッコ良いものをちゃんと作っている」

ダンスが素晴らしいグループなので、ダンサブルなサウンドを取り入れた

――『LEveL』でのTOMORROW X TOGETHERとのコラボのきっかけはどんなことだったのでしょうか。

澤野:まず、僕がTVアニメ『俺だけレベルアップな件』の劇伴を担当することになっていたのですが、オープニング主題歌もSawanoHiroyuki[nZk]でやらせてもらえることになりました。『俺だけレベルアップな件』の原作が韓国のコミックということもあり、今回のコラボに至りました。

――『俺だけレベルアップな件』は韓国コミックが原作となっていることもあり、激しい展開が多くなりそうな作品ですが、劇伴はどの様に作っていきましたか?

澤野:僕は基本的にはリズムを立たせた曲を作ることが多いというか、ハリウッドのサウンドトラックに影響を受けて音楽を作っています。それを踏まえてオファーいただけたところもあったと思うので、普段通り素直に作っていこうと思いました。あと、アニメ化が決定した時のPVにはアメリカの方々が多く反応していた印象があって。先日ニューヨークでのアニメのイベント「Anime NYC」に行く機会があったのですが、そこでの反応も大きく、日本と韓国以外でも、幅広く世界の方に興味を持たれる作品なのかなと感じました。なので、より海外の映画的なサウンドアプローチを自分なりにしていければいいかなと思い、落とし込んでいきました。

――『LEveL』と劇伴で共通性を持たせようとした部分はありますか?

澤野:サントラをこう作ってるから、オープニングをこう作らなきゃと思ったわけではなくて、『LEveL』は、やっぱりオープニング曲なので、作品が始まる時に流れる楽曲ということを意識しています。リズムを立たせて勢いを出していけたら良いかなと考えました。TOMORROW X TOGETHERのファンの皆さんも興味を持ってくれると思いますので、彼らの楽曲としても皆さんに喜んでもらえる様な曲にしたいというのが大きかったです。ダンスが素晴らしいグループなので、ダンサブルなサウンドも取り入れたいなと。

――澤野さんは以前からTOMORROW X TOGETHERの音楽を聴いていましたか?

澤野:僕はK-POPカルチャーにすごく詳しいわけではないのですが、家でずっとMTVを流していたりする中で、TOMORROW X TOGETHERは洋楽寄りのサウンドをやっているなという感覚がありました。

――澤野さんの楽曲の美しさとTOMORROW X TOGETHERの力強さが融合されていますが、どの様に曲を作り上げていったかをお聞きしたいです。

澤野:それぞれのメンバーの歌声が活きるパートを作りたいなと考えました。以前、JO1の河野純喜さん、與那城奨さんとコラボした時に、2人のボーカルが入れ替わるということはあったのですが、5人でそうした形をやるのは新鮮な感覚でした。それぞれのボーカルの個性も感じられて、サウンドをよりリズミカルにしてくれたなと感じました。

――これまでのSawanoHiroyuki[nZk]のプロジェクトでは一人のボーカリストの方を迎えることが多かったですものね。

澤野:そうですね、新鮮ですね。あと、日本のボーカリストとは発声の仕方が違うのか、歌の乗り方も、いつもとは違う雰囲気を感じました。英語もすごくカッコ良くアプローチ出来る方たちだったので、その影響もあり、いつもとは違うサウンド感になったと思います。

TOMORROW X TOGETHERのボーカルに感じた魅力

――制作はどの様に行いましたか? メンバーそれぞれのボーカルから受けた印象は?

澤野:ボーカルレコーディングには僕は立ち合えていなくて、収録は韓国で行っていただき、送っていただいたボーカルをこちらでリミックスしていきました。Aメロではパートごとにすごくカッコ良いアプローチをしてくれて、サビも自分の中で欲しいと思っていた勢いを、テヒョンさんとヒュニンカイさんがつけてくださっていました。ラップパートでは、ヨンジュンさんがカッコ良く仕上げてくれていますし、スビンさんもボムギュさんもエッジを効かせて歌ってくれていました。僕はちょっとがなって歌うぐらいの、海外のボーカリストが好きだったりするので、そうした要素も入れてくれたところがすごく嬉しかったです。

――制作で楽しかったことはありますか?

澤野:たくさんの海外の方が聴くという前提に、メロディーも、海外の方々がちょっと引っかかるようなものにしたいなと考えながら作っていったことが楽しかったですね。

――澤野さんの音楽を聴き込んできた方にとっても、『LEveL』は新鮮に感じられるかもしれませんね。

澤野:そうですね。これまでとはまた違うサウンドになったね、みたいなことをエンジニアの眞鍋 広くんとも話していました。

――今回は遠隔での制作ということですが、実際にお会いしたらすごく盛り上がりそうですよね。

澤野:レコーディングが終わった後に、ライブも観させていただいてご挨拶もしました。短い時間ではありましたが、お話も出来て。

――そうだったのですね。ライブをご覧になっていかがでしたか?

澤野:まずはダンスと歌声が本当に魅力的ですし、カッコ良いのですが、それぞれのメンバーの個性がちゃんとフィーチャーされていて。ファンの方が魅了される理由も、ライブを拝見して分かりましたし、サービス精神も素晴らしいなと思いました。パフォーマンスも素晴らしいですが、同じくらいファンの方のことを大切にしている方々だなと。韓国のアーティストの方のライブに行くのが初めてだったんですよ。

――では特に新鮮に感じられたのではないですか?

澤野:新鮮でした。ボーイズグループの方々のライブ自体をそんなにたくさん観てきたわけじゃないのですが、演出もすごく凝っていて素晴らしかったですね。

海外の方に面白がってもらえる様な工夫を

――澤野さんはこれまでたくさんのアーティストさんをボーカルに迎えていますが、もともとの声質から楽曲のイメージをふくらませるのか、それとも楽曲のイメージが最初にあり、そこにボーカルをディレクションしていきますか?

澤野:僕は基本的には楽曲選考で作っています。なのでコラボする時も、ほとんど曲が出来た状態で、どういうボーカルの方に参加してもらうかと考えてお願いすることが多いです。ただ今回は、“俺レベ”のオープニング主題歌という前提と、TOMORROW X TOGETHERに参加してもらえるということが分かっていたので、その状態で曲を作ることが出来ました。彼らのファンが世界中にいることもあり、僕は普段から日本に限らず色々な国の人たちに興味持ってもらえるような、カッコ良いと思ってもらえるような楽曲を作りたいと思っているので、とても嬉しいコラボになりました。

――グローバルな展開を意識して楽曲作りをしている部分はありますか? タイトルや作詞で気をつけていることや意識していることなど。

澤野:最近は、作詞家の方に歌詞をおまかせすることが多くて、タイトルは話合いながら決めるのですが、自分でサウンドトラックの曲のタイトルをつける時は、へんてこな、読めない様な言葉を選びます。あんまり意味を持たせたくないという意図もありますし、僕は英語が出来ないので、例えばlikeとloveの違いみたいな事が分かっていないままつけていたら嫌だなという気持ちもあります。あとは海外の方がタイトルを見かけた時に「なんだこれ」とちょっと面白がってくれたら良いかなとも思っています。

韓国カルチャーについて「カッコ良いものをちゃんと作っている」

――海外の映画のサウンドトラックに影響を受けているとおっしゃっていましたが、韓国映画やドラマを観ることはありますか?

澤野:観ます。韓国ドラマはたくさんは見れてないんですけど、面白いですよね。韓国の映画はすごくクオリティ高いし、物語の展開とか、“エンターテインメント”というのをすごく徹底していて、映画賞をたくさん取るだけのものを作っているなと感じます。『パラサイト』はもちろん、サスペンスが好きなので昔の作品だと『殺人の追憶』、エンタメ作品でいえば『新感染 ファイナル・エクスプレス』もすごく面白かったです。

――素晴らしい作品ばかりですよね。注目している韓国アーティストはいらっしゃいますか?

澤野:Netflixで配信されている『アーケイン』というアニメがあって、これはゲームの「リーグ・オブ・レジェンド」が原作になっている作品なのですが、リーグ・オブ・レジェンドがある時期色々なアーティストを呼んで曲を作っていたんですね。そこに(G)I-DLEも参加していて、すごくカッコ良いなと。『アーケイン』自体もすごくクオリティの高い作品なのですが、楽曲も良いんですよね。

僕自身が海外の音楽に影響を受けているというところもあるので、韓国のアーティストが世界中の人がカッコ良いと思う様な音楽を作っているというところは、見習いたい部分だなと思います。楽曲もパフォーマンスも極めていて、しっかりとエンターテインメントしていて素晴らしいなと思います。

――韓国に行かれたことはありますか?

澤野:実は今まで1回も行ったことなくて、行ってみたいんですよね。食べることが好きなので、焼肉だったり美味しいものを食べに行きたい。ちょっと話がそれてしまうかもしれないのですが、僕が音楽を始めたきっかけがCHAGE&ASKAのASKAさんなのですが、CHAGE&ASKAは韓国で初めて日本語歌唱による大規模コンサートを開催した日本人アーティストだったりして、当時そのパフォーマンスを映像で見てとても感動したんですね。今は日本にたくさんの韓国カルチャー好きの方がいて、韓国にも日本のカルチャーが好きな方もいる。そうやって国を超えて文化で交流が出来ることは素晴らしいと思うので、僕もいつかライブが出来たら嬉しいですね。

――韓国にも澤野さんの音楽が好きな方がたくさんいらっしゃると思いますので、実現を私も楽しみにしています。最後に作品を楽しみにしている方にメッセージをお願いします!

澤野:韓国原作で、日本のアニメーション制作会社A-1 Picturesが作るというコラボが出来ている貴重な作品だと思います。そしてオープニング主題歌にはTOMORROW X TOGETHERの皆さんが参加してくれていて。日本と韓国で一緒に作った作品が世界中の人に喜んでもらえたら、何より嬉しいです。

(取材:中村梢 / 撮影:朝岡英輔)

<衣装>
カットソー 2万4200円、パンツ 3万1900円<kiryuyrik/キリュウキリュウ>
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