葬儀場で「置いてきぼり」にしないため 難聴児向け絵本で葬式の意味伝える 大田原・威徳院の副住職ら

「おそうしきのえほん」を制作した青龍寺さん

 【大田原】聴覚障害のある子どもが葬式の場で「置いてきぼり」にされることなく、亡き人とのお別れの時間を過ごせるようにと、威徳院(湯津上)の青龍寺空芳(しょうりゅうじくうほう)副住職(33)はこのほど、元ろう学校教諭ほとり(本名・石川阿(いしかわほとり))さん(34)と共同で、難聴児向けの絵本「おとなといっしょによむ おそうしきのえほん」を制作した。葬式の流れや死の考え方などを、分かりやすいイラストでまとめた。

 難聴児は周囲の情報を耳から得ることができず、特に文字の読めない子どもは「何が起きているか分からない」状況になりやすいという。

 「せめておじいちゃんが死んだって分かってほしい」。東京を中心に難聴児の支援に取り組むほとりさんは2年前、当時3歳の難聴児の母親からそう依頼され、葬式で手話通訳をした。葬式の流れなどを手話を交えながら絵に描いて説明した経験から、絵本作りを思い立ったという。

 一方、青龍寺さんの長男(6)は2歳の時に難聴が判明。東京・台東区の仙蔵寺の住職も務める青龍寺さんは、ほとりさんとは手話を教わったり法話の場で手話通訳をしてもらったりするなど親交があり、意気投合した。

 絵本はなるべく文字を使わずに、葬式の流れや服装、「悲しい」「つらい」といった感情を表す手話などをイラストで説明。小さい子どもが理解しにくい「死」の考え方については「朝になっても起きない」「体が冷たい」ということをイラストで示している。

 青龍寺さんは「お葬式は参列者が死と向き合って一歩踏み出すスタートの儀式でもある。この絵本によってお葬式が、誰一人として置いてきぼりにならないような場になってくれれば」と話している。

 一般社団法人「仏教情報センター」が監修。A5判、30ページ、700円(送料別)。メール、電話などで注文できる。メールアドレスはehon.soushiki@gmail.com。(問)仙蔵寺03.3844.1181。

© 株式会社下野新聞社