イヌワシの幼鳥、20年ぶり独り立ち 兵庫北部の氷ノ山周辺 国天然記念物、次代の繁殖に期待

悠々と滑空するニホンイヌワシの幼鳥。羽の白い模様が特徴的=2023年12月13日、但馬地方の扇ノ山周辺(三谷康則さん提供)

 昨年春、但馬地域の氷ノ山周辺で生まれ、6月に巣立ちが確認されたニホンイヌワシの幼鳥が、親元を離れて独り立ちしたとみられる。兵庫県内では2004年以来、20年ぶりで、日本イヌワシ研究会兵庫県支部が確認した。

 国の天然記念物の猛禽類で、全国各地で生息数が減っている。県内でも1970年代に15組を数えたつがいの数が2組に減少し、絶滅が危惧されている。

 すくすくと成長していた幼鳥は、徐々に単独で行動するようになっていた。親鳥は次の繁殖に備え、11月ごろから追い回すなどして独立を促していたが、今月2日には親鳥である氷ノ山ペアで交尾が見られた。次の子育てサイクルが既に始まっており、それ以降は行動を共にすることはない。

 近年では2020年(氷ノ山周辺)、22年(扇ノ山周辺)にひなが生まれたが、それぞれ巣立ち直後や巣内で死んだ。エサ不足や、森林や草原の手入れが行き届かず、狩りをする場所が狭くなっていることなど生息環境は依然として悪い。

 そんな中での快挙に同会員の三谷康則さん(75)は「生まれても途中で死んでしまうことが多かったが、ようやく一人前になってくれてうれしい。どこかで親になり、新しい命を生んでくれたら」と声を弾ませた。(山崎 竜)

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