【福島県】双葉町で新旧町民や町内外事業者が交流する「ふたば飲み」

8月23日、双葉町産業交流センター(通称F-BICC)にて「ちいさな一歩プロジェクト6歩目 ふたば飲み」が開催されました。これは、まだ飲食店の少ない双葉町で人々の交流の場を設けようと不定期で開催されている「飲み会」イベントです。今年(2023年)3月と5月に双葉駅前で実施されたのに続き、この日は3回目。初めてF-BICCとコラボレーションし、昼夜2部構成になりました。ここでは、多数の来場者が食事とお酒を楽しんだ夜の部の様子と、主催者の「ちいさな一歩プロジェクト事務局」(ふたばプロジェクト・UR都市機構・コトラボの三者協働)に取材したお話をお届けします。

文字通り老若男女が集った会場は大盛況

16時半過ぎに会場に到着すると、すでにF-BICC前のテラス席には17時からの夜の部を待つ来場者の姿がちらほら。町内外からお酒や食事を提供する店舗が集結し、準備を進めていました。アルコール販売が始まるとすぐに生ビールで乾杯するサラリーマンのグループ、まずは腹ごしらえとキッチンカーに並ぶ若者たちなどで開始早々から会場はにぎやかです。

18時に双葉駅からのシャトルバスが到着すると、駅西側の公営住宅(通称「えきにし住宅」*)にお住まいのみなさんが降りてきました。震災前からの町民の方も、震災後に移住してきた方も今は同じ双葉町民。みなさん顔見知りのようで、さっそく乾杯で盛り上がっていました。

(*「えきにし住宅」では、被災町民向けの災害公営住宅30戸のほか、新たな転入者も申し込める再生賃貸住宅として戸建15戸、タウンハウス41戸が順次整備されています)

しばらくすると、同じテーブルには隣町で地域おこし協力隊をしている若者や、最近双葉町へUターンしたという二十代の女性、たまたま県外から視察に来ていた大学生、3人の小さなお子さんを連れた若いお母さんなどが集まってきました。みなさんとても楽しそうです。「こうしていろんな人と話ができるので、『ふたば飲み』には毎回参加している」と話す女性の笑顔が印象的でした。

日が暮れるにつれ、F-BICC入居企業や近隣の工業団地に進出した企業の従業員らしき方々の姿もどんどん増えていきます。夕暮れの大空を眺めて仕事帰りの一杯、いいですね。

テラスから続く芝生に敷いたレジャーシートも、まもなく「満席」となりました。主催者によると、今回は夜の部だけで170人、昼の部も入れると200人ほどが参加。町内在住・在勤の人はもちろん、広く浜通り地方一帯から来場があったそうです。

人々の交流を空き家活用につなげ、町の復興へ

「ちいさな一歩プロジェクト事務局」のみなさん。左からコトラボ合同会社の岡部友彦さん、UR都市機構の町井智彦さん、一般社団法人ふたばプロジェクトの宇名根良平さん

この「ふたば飲み」は、冒頭でご紹介した「ちいさな一歩プロジェクト」の事業の一環として開催されました。イベント事務局を務める独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)の町井智彦さんによると、同プロジェクトは双葉町内の空き地・空き家の活用方法を考える目的で始まったもの。2022年9月23日、ひと月前に一部の避難指示が解除されたばかりの町内で「1歩目」となる交流イベントを開催したのに続き、当初は少数の出店者によるマルシェやDIYワークショップ、空き家見学会などを実施してきました。過去2回の「ふたば飲み」をはじめとし、その他のイベントを合わせると今回は数えて「6歩目」となるそうです。

「ふたば飲み」には、事業者の営業支援、なかでも町外事業者に双葉町内で営業機会を提供する目的もあるといいます。この日は、ドリンク類はもちろん、ハンバーガー、カレーから豚丼、タコスまで多様な10店舗がブースやキッチンカーを並べてにぎわっていましたが、一連のイベントを開始した当初は、どこの事業者に声をかけても断られることが多かったとか。

「でも回数を重ねるうち、継続して出てくれる方も増えてきて、今回は双葉産業交流センターさんとも連携させていただくことができ、自ら出店したいと連絡をくださる方もいました。こういう場での来場者との交流が、将来的に双葉町内での出店につながったらうれしいですね。来場者数もおかげさまで「ふたば飲み」を3回やっていますが右肩上がりで、今日も町内在住の方にたくさん来ていただきました。少しずつですが着実に成果は出てきていると思います」(町井さん)

今回は、県外から双葉町に進出した企業2社(浅野撚糸、ARM双葉)も物販ブースを初出店

次回の「ふたば飲み」は11月頃を予定。空き家を活用したワークショップの同時実施も検討中とのことです。これからの双葉町で何ができるか可能性を探りたい人にとっても、町を知る絶好の機会となるでしょう。

「このたび、双葉駅前交差点に建つ洋館(大正時代に建てられた旧診療所で国有形文化財に指定)が、町民の交流・情報発信拠点として整備されることになりました。将来的には、その周辺で毎月あるいは隔週といった頻度で定期イベントが開催できたらいいですね」(町井さん)

神奈川県出身の町井さん。学生時代に宮城県・岩手県の津波被災地で復興まちづくりに関わった経験が現在の仕事にも生きているとのこと

元からの町民も、新たな移住者も、進出企業の従業員も、外からこの地に関心を寄せる人々も。多様な人々を巻き込みながら、双葉町の復興まちづくりに向けた「ちいさな一歩」が着実に積み重ねられています。

「ちいさな一歩プロジェクト」発足時からワンチームの3人


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■ちいさな一歩プロジェクト事務局__
(独立行政法人UR都市機構、一般社団法人ふたばプロジェクト、コトラボ合同会社)
E-mail: futaba.dmarche@gmail.com
Instagram:https://www.instagram.com/futaba_dmarche/

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