アトピーの新療法を開発 和歌山県立医大など発表「強い効果が期待できる」

アトピー性皮膚炎の新しい抗体療法を開発したと発表する和歌山県立医科大学の森川吉博教授(右)ら=和歌山市で

 和歌山県立医科大学(和歌山市)は、重度のアトピー性皮膚炎に対する効果的な抗体療法を開発したと発表した。皮膚のかゆみと炎症を同時に抑えることで、かゆみから、かいてまたかゆくなるという悪循環を断ち切る治療法で、強い効果が期待できるという。

 同大学や東京大学などの研究グループが論文にまとめ、昨年12月に米国の医学生物学専門誌(オンライン)に掲載された。県立医大の解剖学第二講座の森川吉博教授らが今月、県立医大で会見した。

 森川教授らによると、アトピー性皮膚炎は皮膚に激しいかゆみがあり、かくことで皮膚に傷が付き、アレルギーの原因になるものが侵入、炎症反応を引き起こし、かゆみが起こるという悪循環になるのが特徴。ひどくなると、睡眠が妨げられるほか、顔にもできやすいため、見た目が気になり精神的ストレスにつながることも問題となっている。

 現在、有効とされている治療薬もあるが、人によってはほとんど効果が見られないこともある。炎症に効果があってもかゆみに効かなかったり、副作用があったりもするとして、代替療法の開発を目指していた。

 研究の結果、サイトカイン(周囲の細胞に影響を与える低分子のタンパク質)の一つ「オンコスタチンM」が炎症を悪化させることが判明。かゆみや炎症が強い中等度から重症のマウスに「7D2」という抗体を投与したところ「オンコスタチンM」と、かゆみを起こすサイトカイン「インターロイキン―31」の作用を同時に抑え、皮膚症状を「劇的に改善させた」ことが分かったという。

 森川教授は今回の治療法の開発について「既存の薬より少ない回数の投与で効果があり、患者の経済的負担も軽く、治療期間も短く済む」と意義を説明した。今後は、人間に適用できる抗体の作製を目指すほか、アトピー性皮膚炎以外の疾患への効果も検討していきたいという。

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