北海道猟友会「ハーフライフル規制に反対」声明 担い手不足や住民の生活にも影響?

ハーフライフル銃10年継続所持を義務化(Dai / PIXTA ※写真はイメージ)

2022年7月に発生した安倍晋三元首相銃殺事件や、23年5月に長野県の警察官らが殺された事件等を受け、警察庁は現在の銃刀法における「発射罪」について、猟銃やその他の銃にも適用すること等の銃刀法改正案を1月26日からはじまる通常国会に提出する見込みだ。

この改正案に対し、北海道の狩猟者団体「北海道猟友会」等の団体は緊急声明を発表し、長野県の事件で使われた「ハーフライフル銃」所持の規制に「断固反対」等と表明している。

過去に起きた痛ましい事件

安倍晋三元首相銃殺事件は、22年7月8日に奈良県奈良市・近鉄大和西大寺駅近くで発生。同市内に住む男が手製の銃を用い、安倍元首相の後方から2発発射して首と左上腕部に銃弾が着弾し、心肺停止となった。その後に蘇生措置を施されたが、同日夕方に死亡が確認された。使用された銃は1回に6個の球を発射できる仕組みで、テープ等でぐるぐる巻きに固定して使用していた。

23年5月に長野県で発生し、警察官ら男女4人が殺害された立てこもり事件でも銃が使われた。同年5月30日配信の朝日新聞によると、逮捕された男は「ハーフライフルを使った」と供述。「この際に使われた銃弾は、主に大型動物の狩猟用の『スラッグ弾』と呼ばれる威力の強いもの。一方、容疑者は2015年以降、銃4丁の所持の許可を受けており、このうち19年に許可を得たものがハーフライフルだったとみられる」と報じている。

ハーフライフル銃10年継続所持を義務化

これまでに明らかになった大まかな銃刀法改正案の一部内容は、以下の通りだ。

  • 「発射罪」について、拳銃等に含まれない銃にも適用する。
  • ハーフライフル銃の定義を見直し、さらに厳しい基準を適用。散弾銃と同じく、10年間継続して所持していなければ所持許可申請できなくする(現在は申請が認められれば所持可能)。
  • ネット上等で銃の不法所持や製造をそそのかす等の投稿等に罰則を導入する。

そもそも、反対声明が相次いでいる「ハーフライフル銃」とは何なのか。猟友会とともに反対の声明文を出した北海道銃砲火薬商組合の資料によると、ハーフライフル銃は銃身の2分の1以下のライフリング(らせん状の溝)がある銃器で、主に単一の弾丸を発射。粒状の散弾も発射できるとしている。また前述の通り、申請が認められれば所持でき、経験等を積めば150mまではヒグマを確実に打つことができるという。

道内で「反対」とする声明を発表した主な団体は、北海道猟友会、北海道銃砲火薬商組合、エゾシカ協会、ヒグマの会等だ。団体のうち、北海道猟友会の担当者は「今は改正案を提出しようとしている関係者に働きかけている状態だ」とコメントした。なお、本稿記者は警察庁側に問い合わせたが、締め切りまでに回答はなかった。

「正しく銃を使用している者への規制は不要」

これら団体は声明文の中で、主に以下のようなことを主張している。

(1)命中精度の低い散弾銃を用いた捕獲により、不十分な管理対策となってしまう。
(2)狩猟を始めるには10年待たなければならず、その間にハンターの高齢化の影響でハンター人口がもっと減少してしまう。
(3)(2)が進むと、現在も支障が出ているエゾシカやヒグマ対策がさらにおろそかになる。
(4)長野の事件でハーフライフル銃が使われたが、犯人をしっかり罰するべき。使用された銃の種類は関係なく、正しく使用している者に対する規制は不要。

賛否両論も活発な議論に期待

「銃を使った事件が起きるのを防止するには、銃を使いづらくする」
「銃を使って犯罪する人が悪く、銃そのものは悪くない」

今回行われている議論はこのように二分されるだろう。ハンター側としては担い手不足やそれらを背景として、住民らに動物の被害が及ぶのを避けたいはずだ。反対に一般市民から見れば、いつ誰が銃を持って犯罪を行うのか分からず、不安な日々を過ごす可能性があるのも理解できる。

1月24日には、この問題について北海道が警察庁に要望書を提出している。どうすればこの問題を解決に導く、または解決に向けて近づけていくのか。活発な議論が行われることを期待したい。

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