残ったのは“多額のローン” 手付金を払った住宅メーカーが10日後に破産 詐欺の罪に問われた社長の男に判決

住宅を建てられるような経営状態でなかったにもかかわらず、客に工事の手付金を支払わせたとして住宅メーカー社長の男が詐欺の罪に問われた裁判で、名古屋地方裁判所岡崎支部は男に執行猶予付きの有罪判決を言い渡しました。

起訴状などによりますと、愛知県尾張旭市の住宅メーカー「アポロホーム」の社長、永指秀明被告(45)は2021年9月、家を建てられる経営状態ではなかったにもかかわらず、愛知県知立市の女性から住宅建築工事の手付金50万円をだまし取った詐欺の罪に問われています。

被害に遭った女性が夫婦で購入したのは、大きなバルコニー付きのマイホーム。

土地と建物で総額4500万円で契約しました。

土地の売買には消費税がかからないため「土地代と建物代を入れ替えることでお得になる」と言われ、土地代3000万円を全額ローンで支払い、住宅建築工事の手付金50万円も払いました。

しかし、その10日後に会社の破産を知らせる通知が届きました。

(夫)
「これから(ローンを)35年払わないといけないと思うと、すごく不安。何も手元に何も残らないので言葉にできない悔しさがある」

2023年8月の裁判では女性も証人として法廷に立ち「買った土地は購入額の半額でしか売れず、1500万円以上の損害を受けた」などと被害の実態を話しました。

(被害に遭った女性)
「特に緊張することもなく挑めた。(永指被告には)素直に罪を認めてほしい」

一方、被告人質問で女性が手付金を支払ったその日に弁護士に破産の相談をしていたことについて問われた永指被告は「『経営が厳しいので、一度相談したい』と言ってアポを取っただけで、相談前に破産は決めていなかった」と主張。

最終陳述でも「人をだましてお金を取ったつもりはありません」と述べていました。

検察側は「金融機関から新たに融資を受けられる見込みはなく、事業の継続が困難との認識があった」として懲役2年を求刑。

一方、弁護側は「直前まで営業メールや客と面談するなど、事業継続の意思があった」などとして無罪を主張しました。

(被害に遭った女性)
「検事さんが求刑した懲役2年を求めます」

(夫)
「永指被告から謝罪もない。怒りの感情も収まっていない」

そして、25日に名古屋地裁岡崎支部で開かれた判決公判で水野将徳裁判官は「業務継続が困難なのは明らかで、破産が有力な選択肢と考えていたと認められる」などとして、永指被告に懲役1年6か月、執行猶予3年の判決を言い渡しました。

(被害に遭った女性)
「私たちが主張していたことが裁判所で認められて、少し気持ちが晴れた。ただ、お金が返ってきていないし、執行猶予がついたことが納得いかない。終始、自分の罪を認めない態度だったので、刑務所で改めて考える時間が欲しかった」

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