観光都市(?)奈良のこれからを考える ⑧~奈良県南部の観光資源 その2~

谷瀬の吊り橋

今回は、流行りのキャンプ等のアウトドアにも関係する自然について紹介したいと思います。

奈良県でアウトドア関連施設が多く存在している地域は、前回同様、奈良県南部地域です。温泉地でも紹介させていただいた十津川村、天川村、川上村をはじめ、下北山村、東吉野村、曽爾村、御杖村など、多くの地域でアウトドアを楽しめる場所があります。

紅葉のみたらい渓谷

そして、その形態もテント、オートキャンプ、コテージなど様々です。近隣には、十津川村の「谷瀬の吊り橋」、天川村の「みたらい渓谷」、下北山村の「池原ダム」などの観光名所も数多くあります。

大台ヶ原とは・・・

紅葉の大台ケ原

そして、その中でも特に有名なのが、近畿の屋根とも呼ばれる「大台ケ原」です。「大台ケ原」は、奈良県と三重県の県境にある標高1,695.1mの山で三重県の最高峰である大台ケ原山(国土地理院の地図には「日出ヶ岳」と表記)をはじめ、三津河落山(さんずこうちさん)や経ヶ峰(きょうがみね)など、標高1,400mから1,600mの複数の山と、これらの山に囲まれた東西5 kmほどの台地状の地帯で、奈良県吉野郡上北山村と同郡川上村および三重県多気郡大台町(旧宮川村)に跨っています。

また、「大台ヶ原」は吉野熊野国立公園の一部に指定されているほか、景観を保護するための特別保護地区にも指定されています。その他にも、「日本百名山」に選ばれているほか、日本百景、日本の秘境100選にも選ばれており、1980年には国際連合教育科学文化機関の生物圏保護区(ユネスコエコパーク)として「大台ケ原・大峯山・大杉谷」の名称で登録もされています。

東西で異なる自然環境

大峰奥駆道・熊野参詣道「イメージ図」

中心付近にあるビジターセンターから東側の「東大台」と呼ばれる地域は、一般登山者向けのコース「東大台ヶ原自然観察路」が整備されています。一方、西側の「西大台」と呼ばれる地域は、自然環境を保持して自然体験の場を提供するため、環境省により立ち入り人数が制限(曜日や時期に応じて、1日につき30人~100人)されています。

秋の紅葉シーズンの10月頃を中心に降水量が多く、1920年には年間8,214ミリの雨量を記録し、1923年9月の台風時には一日に1,011ミリという降水記録もあります。2019年の数値ですが、年間最大降水量の宮崎県が3,046ミリ、全国平均が1,624ミリという数値と比較しても、局地的とはいえ、とんでもない降水量だということがわかります。

前回の温泉地同様、そのほとんどが公共交通機関での訪問が難しい地域で、自家用車の利用が必須となってくる上、更に「大台ケ原」などの南部山岳地帯は自然条件のハードルも高く、訪問しにくいのが正直なところです。

自然豊かな奈良県

春日山原始林

「大台ケ原」の話題が中心になってしまいましたが、奈良県全体で考えてみると、その他にも、世界遺産にも登録されている奈良公園周辺の「春日山原始林」や南部山岳地帯の「大峯奥駈道」や「熊野参詣道」など、自然と触れ合える場所が多くあります。

これらは、歴史・文化と自然の両方に触れられる数少ない地域であり、有名な社寺仏閣だけへの訪問とは趣の違った奈良の魅力を発見・堪能いただけるのではないか思います。

(つづく)

(これまでの寄稿は、こちらから)

寄稿者 志茂敦史(しも・あつし) 奈良交通㈱ 東京支社長

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