真鶴町の元参事が退職 名簿不正で職務代理者2度務め 「町長」提出議案を「課長」として説明する珍場面も

真鶴町議会本会議で上下水道課、財務課2部署の課長として答弁する上甲元参事=昨年9月6日、真鶴町議会

 真鶴町の松本一彦前町長が選挙人名簿を不正利用した問題を巡る混乱で、これまでに2度、「町長職務代理者」を務めた上甲新太郎元参事(60)が昨年末に町役場を退職した。町では3年以上にわたり副町長が空席だったこともあるが、2度の代理は県内でも異例。長らく町政の立て直しに奔走した大黒柱の退職に、町役場からはねぎらいや不安の声が漏れた。

 職務代理者を務めた1度目は、不正発覚で松本氏が町長を辞職した2021年11月から出直し選挙で再選するまでの1カ月間。2度目は町長のリコール(解職請求)成立で松本氏が失職した昨年9月から新町長が誕生する同11月までの2カ月間。荒波にもまれる“真鶴丸”の舵を取った。

 不正問題の余波で町役場では職員の2割が離職し、入庁5年未満の若手職員が5割弱を占めた。頼りになる中堅やベテランの不足が深刻な中、上甲氏は上下水道課長と財務課長の業務に加え、「町長」や「副町長」として会議に出席し、町議会との調整、近隣市町との交流などもこなした。職務代理を務めた期間は1日も休日がなかったという。

 町議会では「町長」として上甲氏が提出した議案を、「課長」の上甲氏が説明するという場面も。前代未聞な状況が続く中、「新しい町長が決まるまでのつなぎ役として、とにかくミスを起こさないように」との思いで駆け抜けた。

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