某アメコミ映画とは無関係!世紀末救世主伝説な雷神ソー&ロキがヒャッハーするSFアクション映画『ゴッド・オブ・サンダー ラグナロクの戦い』

『ゴッド・オブ・サンダー ラグナロクの戦い』© 2022 Acme Holding Company, LLC.

アサイラム製『ソー』登場!

大作ヒーロー映画や某バイキング漫画などのヒットにより「北欧神話」が映像作品の定番ネタとなって久しいが、中でも人気シリーズとなっている“某「ソー」映画”から大胆にアイデアを頂戴した、神話級スケールを持つSFアクション映画を紹介したい。

その名も『ゴッド・オブ・サンダー ラグナロクの戦い』(2022年)は、ご存知<アサイラム社>謹製のB級便乗作品。とはいえ登場キャラクターや基本設定は多くの映画/漫画ファンにとっておなじみのものばかりなので、あからさまなツッコミどころをうまくスルーすれば、非常にすんなりと世界観に入っていけるはずだ。

アメコミ映画に漫画、異世界転生好きも!

「雷神ソーVS裏切り王子ロキ! 北欧神話の“ラグナロク(終末の日)”をベースに、地球を巻き込んだ神々のバトルが勃発するファンタジー・アクション‼」……という触れ込みの本作のはじまりの舞台となるのは、ご存知“神々の世界”アスガルド。そこで長らく囚われていたロキが牢を脱獄したことから騒動が始まる。

行く手を阻む父オーディンを倒し、地球へと向かったロキ。彼の目的は<魔狼フェンリル>を目覚めさせること。その力で“ラグナロク”を起こし、世界を支配するのだという。お察しの通り本作のキモとなるのが、このフェンリルなる怪物である。これまた有象無象の異世界転生モノ等でおなじみの狼型モンスターだが、もちろんゴジラみたいにフィジカルで街を破壊するみたいなことではなく、その図体もクマを一回り大きくした程度のものだ。

オーディンいわくフェンリルを倒すためには、ロキが持ち去った<ワーグの魔除け>の半分を奪い、さらに遥か昔に人間の王に渡されたもう半分を合わせ、魔除けを完成させなければならない。その面倒くさい魔除けを手に入れるべく雷神ソーは地球に向かうが、ある遺跡で発見された洞窟内にフェンリルが眠っていて……。

悪役モブにしか見えないソーが放つ愛嬌

ソー役のマイロム・キンガリーは『ワイルド・スピード ICE BREAK』(2017年)などで屈強系モブを演じてきた人で、観客が瞬時に悪役判定できるタイプの風貌。戦闘モード時に表れる目もとメイクのせいでロード・ウォリアーズにしか見えないところなどに愛嬌を感じさせる、ぜひ顔を覚えておきたいガチムチ系アクション俳優だ。

そしてロキを演じるダニエル・オライリーはサスペンス~アクションからロマコメまで幅広く活躍しているが、ベースが絶妙にイケ気味のためワイルド系よりも嫌味系が似合ってしまう損な人。なおオーディンを演じるのは『マッドマックス2』のウェズ役で知られるヴァーノン・ウェルズで、本作の省エネ豪華キャスト枠にあたる。

アサイラムのお約束とアメコミ映画からのごっつぁんポイント

M◯U版と同じくムジョルニアをブンブン振り回したり学者チームの協力を仰いだりするソー、手際は悪くないのに不条理展開のおかげで報われないロキ、会話シーンが冗長な割にあっさり見つかる重要アイテム、思いのほか犬っぽくてかわいいフェンリル(潔い駄CGっぷり)、ものの数秒で都市が壊滅(したことに)する軽さ等々、低予算ならではのウィークポイントは多々あるものの、それがサクサクとした見やすさに繋がっているのも興味深い。

終始ダラリとした展開でカット割りもあって無いようなものだが、おかげで“何をやっているのかわからない”みたいなチャカチャカしたアクションにはなっていないので、そこは結果オーライだろう。都内の撮影スタジオに毛が生えた程度のアスガルドとか、ユーザー判定のユルいムジョルニアとか、結局フェンリルは何だったんだとか、疑問は残るものの言うほど気にはならないところが本作の最大の魅力と言えるかもしれない。

『ゴッド・オブ・サンダー ラグナロクの戦い』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年1月放送

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