『金カム』と併せて観たい!実在のアイヌ女性の壮絶半生を描く映画『カムイのうた』~差別と迫害に満ちた民族の史実~

アイヌの心には、カムイ(神)が宿る――

全てに神が宿ると信じ、北海道の厳しくも豊かな自然と共存して生きてきたアイヌ民族。日本の北方エリアにおける先住民として独自の文化を築いてきたアイヌ民族は、やがて和人(大和民族)によって差別と迫害の日々を余儀なくされていく。生活の糧であった狩猟・サケ漁が禁止され、住んでいた土地を奪われ、アイヌ語が禁止された。“同じ民族ではない”という理由で――。

1903年に北海道で生まれた知里幸恵(ちり ゆきえ)という実在の人物をモデルに、アイヌ民族の壮絶な史実を赤裸々に描いた映画『カムイのうた』が、2024年1月26日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次公開となる。

語り継がねばならない真実の物語

学業優秀なテルは女学校への進学を希望し、優秀な成績を残すのだが、アイヌというだけで結果は不合格。その後、大正6年(1917年)、アイヌとして初めて女子職業学校に入学したが“土人”と呼ばれ理不尽な差別といじめを受ける。

ある日、東京から列車を乗り継ぎアイヌ語研究の第一人者である兼田教授が、テルの叔母イヌイェマツを訊ねてやって来る。アイヌの叙事詩であるユーカラを聞きにきたのだ。叔母のユーカラに熱心に耳を傾ける教授が言った。

「アイヌ民族であることを誇りに思ってください。あなた方は世界に類をみない唯一無二の民族だ」

教授の言葉に強く心を打たれたテルは、やがて教授の強い勧めでユーカラを文字で残すことに没頭していく。そしてアイヌ語を日本語に翻訳していく出来栄えの素晴らしさから、教授のいる東京で本格的に頑張ることに。同じアイヌの青年・一三四と叔母に見送られ東京へと向かうテルだったが、この時、再び北海道の地を踏むことが叶わない運命であることを知る由もなかった……。

新鋭・実力派キャストが紡ぐアイヌ女性の功績

知里幸恵は、文字を持たずユーカラという叙事詩で民族の歴史を詠い継いできたアイヌの文化を初めて美しい日本語に訳した人物として、その功績が今も語り継がれる人物。

そんな幸恵をモデルにした主人公テルを演じるのは、Netfilixの世界的ヒットシリーズ『今際の国のアリス』やTBS『ドラゴン桜』、NTV『ネメシス』といった人気ドラマに出演し、映画『あつい胸さわぎ』では主演を務めた吉田美月喜だ。

また、テルに思いを寄せるアイヌの青年・一三四(ひさし)を、映画『ソロモンの偽証』(2015年)での怪演で一躍注目され演技派として活躍している望月歩が演じるほか、ミュージカル『レ・ミゼラブル』で世界的に脚光を浴びた島田歌穂がテルの叔母イヌイェマツを演じ、本作の主題歌も担当している。さらに、テルに自分の言葉でアイヌの文化を後世に残すことを勧めたアイヌ語研究第一人者の兼田教授を加藤雅也が、その妻を清水美砂といったベテラン俳優たちが演じ、本作に重厚感を与えている。

本作のメガホンをとった菅原浩志監督は「アイヌ神謡集」の序文をダイナミックな映像で表現。四季折々の北海道の雄大な自然美をスクリーンに投影させ、自然と共存したアイヌの歴史を描き、「天真爛漫な稚児のように」を失いつつある現代の自然と文化に警鐘を鳴らしている。北海道という広大な大地が織り成す豊かな自然は、その恵みのもと全ての人類が共生するという自由の象徴として捉えることができる。

『カムイのうた』は2024年1月26日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

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