【福島県】移住者8人が登壇!「避難地域12市町村移住トークセッション」レポート

2023年8月25日、楢葉町地域活動拠点施設「まざらっせ」で、福島12市町村に移住をした8名の方が内堀雅雄福島県知事と意見交換を行う「避難地域12市町村移住トークセッション」が開催されました。

参加した移住者の方々と知事が、実際に暮らしてみたからこそ感じる地域の魅力や課題について和やかに率直な意見を交わしました。そのトークセッションの様子をお伝えします。

移住後の生活を楽しむ8名が参加

トークセッションにゲストとして参加したのは以下の8名の方々です。

・立川 哲之さん(南相馬市小高区)
東京都品川区出身。学生時代に東北の食と酒を盛り上げる活動をスタート。卒業後、宮城県の酒蔵で修行し、2020年南相馬市小高区に移住。2022年に「株式会社ぷくぷく醸造」を設立。

大場美奈さん(広野町)
福島県いわき市出身。2019年起業型地域おこし協力隊として広野町へ移住。町内の古民家を借り上げ、2022年にゲストハウス「クラシノガッコウ月とみかん」を立ち上げた。

・磯辺友美さん(楢葉町)
埼玉県さいたま市出身。知人の誘いをきっかけに楢葉町への移住を決断。エンターテインメントを活用して、様々な社会課題に取り組む事業を展開していきたいという想いから2022年に「合同会社オートラベス」を設立。

古谷恵美さん(富岡町)
東京都出身。2018年、富岡町図書館司書に採用され移住。通常業務のほか、図書館情報紙の作成、イベントの企画、移動図書館活動など、本に関わる幅広い業務を行っている。

・福塚裕美子さん(川内村)
大阪府貝塚市出身。震災後にはじめて川内村を訪れ、2012年に単身で移住。2016年ドイツへ留学。帰国後、川内村へ戻り、2021年4月に花店「Fuku Farming Flowers」をオープン。

谷田川佐和さん(大熊町)
東京都出身。大学在学中にNPOスタッフとして異世代交流プロジェクトの運営を行う。その後「株式会社Oriai」に参画。2022年大熊町に移住し、地域と若者をつなぐ活動を行っている。

千頭(ちかみ)数也さん(浪江町)
東京都出身。都内のIT企業に勤務。浪江町でのアイドルイベント参加をきっかけに2022年に移住。フルリモート勤務で仕事をしながら地域活動も行っている。

・浜田昌良さん(双葉町)
大阪府出身、横浜育ち。通商産業省(現在の経済産業省)を経て参議院議員を3期18年務める。外務大臣政務官(1期)、復興副大臣(5期)を歴任。2022年に勇退し、双葉町へ単身移住。

ファシリテーター
・藤沢烈(ふくしま12市町村移住支援センター長)

食と酒で地域を盛り上げたい ー立川哲之さん(南相馬市)ー

立川:僕は新しい酒造りにチャレンジするために移住し、2022年に「ぷくぷく醸造」という会社を立ち上げました。大学生の頃から「食と酒で地域を元気にしたい」と活動をはじめ、現在は浜通りに田畑を増やしていくために、自分の酒蔵を持たずに酒蔵やブルワリーの設備を借りて酒造りをしています。2024年には自社醸造所を立ち上げる予定です。

南相馬市小高区は、年々起業家や移住者が増えています。若手起業家たちと一緒に切磋琢磨できる環境で、楽しく生活を送っています。

内堀知事:「食と酒で地域を元気にしたい」というコンセプトがとてもいいですね。ものづくりを始める時にすべて自分一人で新しく作ろうとすると時間がかかりますが、第三者の力を借りながら浜通りのお米を使って酒造りをしている姿は、地域への最高のエールになりますね。

帰ってくることができる居場所を作りたい ー大場美奈さん(広野町)ー

大場:私は広野町にある古民家を借りて、ゲストハウス兼大人が学べる学校「クラシノガッコウ月とみかん」を運営しています。町に関わりを持ってくれた人たちがまた訪れたくなるような居場所を作りたいと思ったことが、ゲストハウスを立ち上げたきっかけです。

福島12市町村はさまざまな活動をしている人がいる反面、「移住したら何かすごいことをしなければいけないのではないか」とプレッシャーを感じてしまう方もいるかもしれません。しかし、決してそんなことはありません。それぞれのまちに特色があり、自分に合った居場所を見つけられることがこの地域の魅力だと思っています。

内堀知事:広野町に関わってくれた方が帰って来られる居場所を作りたいという気持ちが素敵だと思いました。これから大場さんの手によってさらに素敵な空間に生まれ変わることを期待しています。

エンタメの力で町を盛り上げたい ー磯辺友美さん(楢葉町)ー

磯辺:私はまだ世に出ていない芸人さんに光を当てる活動がしたいという思いから、勢いで移住して起業しました。

移住して良かったことは、人の温かさを感じられることです。芸人さんを町に呼んだ時、地域の方たちが食べきれないほどの差し入れを持ってきてくれました。これまで私はお隣さんの顔すらわからないという環境で育ってきたので、地域コミュニティのありがたさを実感しました。

楢葉町には、まだドラッグストアもネイルサロンもなく、美容サービスが不足していることが悩みです。女性の気持ちに寄り添ったまちづくりをしてもらえたらうれしいです。

内堀知事:エンタメの力っていいですよね。笑顔があるだけで地域が元気になると思います。美容のお話はおじさんの私にはまったく発想がなかったことなので、若い方を地域に呼び込むにはそのような視点が必要なのだと勉強になりました。

何でもない風景が日常を支えてくれる ー古谷恵美さん(富岡町)ー

古谷:私がこの町に来て良かったと思う瞬間は、風が気持ち良かったり、夜が静かで波の音が聞こえたり、美しい山並みを見てホッとしたりできる時です。普段わざわざ言葉にしないようなことこそが、日常を支えてくれています。

移住は思い切りが必要ですが、人生の一つの選択肢として心理的なハードルを下げて考えてみるのもおすすめです。町にはまだまだお店が少ないので、本屋や手芸店など、趣味や芸術に親しめる場所が増えていけばうれしいです。

内堀知事:趣味や芸術に触れられる場がほしいという想いをしっかり受け止めました。 海の音や美しい山並み、そういうものが実は自分を支えているというお話から、人生において大切なことに気づかせてもらいました。

川内村が好きだからここで暮らしている ー福塚裕美子さん(川内村)ー

福塚:もともと東北にゆかりはありませんでしたが、都内の花屋で働いていた時の同僚が川内村出身で、震災後の2012年に一緒に村を訪れました。荒れた田んぼを見て涙を流して悲しむ彼女を見て、「この風景を取り戻すお手伝いをしよう」と思いました。それから村の復興のために役立ちたいと3年間単身移住しましたが、正直生活も活動も大変で、一度は村を離れたんです。

その後、夢だった花屋開業の修行をするためにドイツ留学をしましたが、川内村を思い出さない日はなく、離れたほうが辛いことに気づきました。帰国後、今度は、復興のためではなく村が好きだから移住をしました。好きな場所で、好きな商売をして暮らす今が一番楽しいです。

内堀知事:ドイツ留学前の移住では力が入りすぎて疲れてしまったけれど、現在は村民として自分らしく暮らしている。移住者にしかわからない気持ちの部分をお話いただけました。お店もオープンされ、夢を持って前に進んでいる姿が素晴らしいです。

大熊町での仕事がとにかく面白い! ー谷田川佐和さん(大熊町)ー

谷田川:キャリアに悩んでいた時期に「新しい仕事に挑戦してみないか」と声をかけていただき、移住をしました。現在は、地域活性化事業を手掛ける「株式会社Oriai」に所属しながら「大熊インキュベーションセンター」でコミュニティマネジメントをさせていただいています。

インフラも整っていない大熊町で新たな取り組みを生み出すことは簡単ではありませんが、経験したことのないことに挑戦させてもらっていて、毎日の仕事が面白いです。

内堀知事:谷田川さんが町のために一生懸命活動している姿は、ふるさとに帰ってきた方、帰りたいと願う方にとっても心強いですね。何より、大熊町で「仕事が面白い」と前向きな取り組みをしている姿を見てうれしく思います。

地域コミュニティを強くしていきたい ー千頭数也さん(浪江町)ー

千頭(ちかみ):移住は自己投資になっていると感じています。町には興味深いバックグラウンドを持った方が多く、お話をするだけで勉強になるんです。今後は、地元の方たちや廃炉工事関係者の方たちを巻き込んだ地域コミュニティづくりをしていきたいと思っています。

最近では、浪江神社火防祈祷祭「裸参り」を復活させる活動をしています。まずは神社をきれいにしようと呼びかけたところ、50人も集まってくれました。地域のみんなで町を盛り上げようという機運が高まっていることがうれしいです。

内堀知事:祭を復活させることは本当に大変です。その第一歩の清掃活動に、町の居住者の2%にあたる50人が集まったとは驚きました。また、住民票を移さないケースが多いため、よその方のようになってしまう廃炉作業員の皆さんも、町に戻られた方や新たに移住された皆さんと同じ土地で一緒に生活している。こうした方たちが交わったコミュニティはさらに素敵な広がりになるのではと思います。

町民として福島の復興の支えになる ー浜田昌良さん(双葉町)ー

浜田:国会で決めたことが地域でどのように受け止められているのか、現地で感じたいと思い移住をしました。現在はリモートで復興コンサルタントをしながら、町の人とお花見会をしたり、芋煮会をしたりと、地域コミュニティの中で暮らしています。今後は地元の方と移住者、両方の力を活かしたまちづくりをしていきたいです。

移住者同士が情報交換できる場も必要です。インターナショナルスクールのような学校ができれば、ここで働きたい、学びたいという方が増えていくのではと考えています。

内堀知事:浜田さんは国会議員でいらした当時から「福島の復興はライフワークだ。一生をかけてやる」とおっしゃっていました。今まで国政の側から福島に関わってきた方が、町民として町に関わっていらっしゃる。まねできない素晴らしい姿だと尊敬しています。

ここには人が輝くための本質がある

内堀知事:皆さんのお話を伺って感じたことが3つあります。1つ目は、人の温かさやつながり。2つ目は、12市町村は人口が少ないからこそ一人ひとりの価値が高まるということ。この場所だからこそ、それぞれが輝くための本質があります。3つ目は、みんなにとって当たり前のものがまだ揃っていない地域では、自分の力を活かして行動することで、トップランナーになれるということです。皆さんには、ぜひこの地で自分の想いを実現させてもらいたいと思います。


トークセッションの内容はYouTubeでも配信しています。

※所属や内容は取材当時のものです。
文:奥村サヤ

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