「その時が来たら考える」では遅い、将来の住宅購入のために今からやっておくべきこと

お子さんが小学校に入学するタイミングで住宅を購入したいというAさん(37歳)。「大きな買い物だから、事前にしっかりと準備をしておきたい」と、ファイナンシャルプランナーの筆者のもとに相談に来られました。Aさんが将来の住宅購入に向けて、今からやっておくべきことについてみていきましょう。


【相談内容】

上の子が小学校へ入学するまでに住宅を購入したいと考えています。まだ具体的に動き始めていませんが、どれくらいの住宅を購入できるのか、購入予算の目処や準備しておくべきことがあれば知りたいです。

【相談者プロフィール】

・性別:女性

・年齢:37歳

・職業:会社員

・家族構成:夫(40歳・会社員)、4歳、1歳の子2人

・住居:関東(賃貸)

【収入】手取り収入合計:年間約650万円

・毎月の世帯の手取り金額:46万円(夫の月収35万円、妻の月収23万円程度(時短勤務))

・年間の世帯の手取りボーナス額:67万円

・児童手当:月額2万円5千円

【支出】

・毎月の世帯の支出目安:43万円

(内訳)

・住居費:6万円

・食費:8万5千円

・水道光熱費:2万円

・教育費:6万円

・保険料:4万5千円

・通信費:1万5千円

・車両費:1万5千円

・お小遣い:5万円

・その他:8万円(日用品、衣類・美容、趣味娯楽費他)

【世帯の資産状況】

・現在の預貯金総額:700万円

(年間貯蓄額:100万円)

・現在の投資総額:なし

・現在の負債:300万円(自動車ローン)

相談者の方の現状をもとに、住宅購入に向けて今からやっておくべきことを確認していきましょう。

ライフプランで住宅購入後の暮らしをイメージ

住宅の購入予算を立てるには、ライフプランによる家計の全体像の把握が欠かせません。
住宅ローンはいくら借りられるかではなく、いくらなら無理なく返済できるかが重要です。現在の家計状況を元に、今後の子どもの進学、車の買い替えといったライフイベントの意向に沿ったライフプランを作成し、購入予算の目安となる、無理なく返済ができる住宅ローン金額のシミュレーションを行いました。

シミュレーションの結果、現時点では約5,000万円を目処に住宅ローンを組めることがわかりました(35年ローン、変動金利0.6%/年の場合)。

ライフプラン作成は、お金だけではなく、家族の価値観や大切にしたいものを具体化していくことにもなります。相談者様へのヒアリングを通して、住宅購入において重視したいポイントも見えてきました。

Aさんご夫婦は、お互いの職場への通勤時間、最寄り駅までの所要時間、駐車場があることの優先度が高く、候補となるエリアや、物件に求める条件を具体化することができました。

ライフプランを作成したことで、購入予算や求める条件が明確になり、物件を具体的に探しやすくなったそうです。実際に不動産情報サイトで物件の検索をしたり、興味を持った物件の見学に行ったり「住宅購入に向けて動き出すきっかけになりました」とお話されていました。

住宅ローンの負担を減らす家計の見直し

住宅ローンの借入額は、現状で無理なく返済ができるようシミュレーションを行っています。とはいえ、今後の家計状況やライフイベントの変化にも対応できるよう、家計の収支を整えておくことは大事です。

今回のケースでは、固定費の削減からはじめ、夫婦ともに割高になっていた通信費と保険の見直しを行いました。

また、住宅ローンの返済が定年退職以降も続くため、老後生活の安定のためには返済期間を短縮する対策が必要な場合もあります。実際に繰り上げ返済を行うかどうかは置いておいたとしても、資金確保も踏まえた資産形成を現役時代から行っていくことが欠かせません。

相談者様はこれから教育費の負担が大きくなる期間もあるため、比較的資金の流動性があり、運用の変更もしやすいNISAを使った積立投資をはじめるアドバイスを行いました。

家計の見直しも、資産形成も、対策後の期間が長くなるほど効果が大きくなるので、早めの対策を行うことが効果的です。

住宅ローン審査前に見直すべきこと

住宅を購入する際には、多くの方が住宅ローンを組むことを想定されるでしょう。注意したいのは、住宅ローンは誰でも希望通りに利用できるわけではない点です。金融機関による住宅ローンの審査に通り、提示された借入可能額の範囲内でしか住宅ローンを利用することはできません。審査で重視されるのは勤務先や収入状況ですが、他にも影響を受けるのが住宅ローン以外の借入状況です。

住宅ローンの借入可能額を算出する際には、住宅ローン以外の借入金も含めトータルでいくら借入可能かを判断します。カードローン、自動車ローンなど、他の借入がある場合は残債分住宅ローンの借入可能額が下がる可能性があります。

今回のケースでも、返済中の自動車ローンが住宅ローン借入額に影響を及ぼすことが想定されたため、可能であれば貯蓄などから返済していくことをお勧めしました。

これから住宅ローンを組む予定で、車の買い替え予定もある方は、ローンやカーリースではなく貯蓄から購入する、または購入時期をずらすことで、住宅ローン借入額への影響を抑えることができます。

他にも借入可能額へ影響を及ぼすのが、クレジットカードに付帯しているキャッシング利用枠です。実際にキャッシングを利用している金額ではなく、利用枠自体が対象となります。クレジットカードのキャッシング利用枠は作成時に自動付帯されている場合もあります。カード会員専用サイトやクレジットカードを受け取った際の同封書類などで確認し、不要なキャッシング利用枠は減額や外す手続きを行いましょう。

健康状態の維持も大事な備え

住宅ローンを組む際に、ほとんどの場合で団体信用生命保険(団信)への加入が条件となります。健康状態に問題があり、団信へ加入ができないと審査に通ることができず、住宅ローンを借りること自体ができません。がん団信、3大疾病保障など、保障がさらに厚い団信もありますが、一般団信と同じように健康面での審査があるため、希望しても選択できない場合があることを覚えておきましょう。

住宅購入は生命保険を見直すタイミングでもあります。住宅は資産になること、団信へ加入することで必要保障額等が変わります。それまで加入していた保険を見直し、新たな保険へ加入するとなった際にも影響するのが健康状態です。

告知内容や、健康診断で受けた「要検査」等の指摘事項をそのままにしていることで保険に加入できない、または加入条件が厳しくなる可能性があります。

健康診断を定期的に受けるのはもちろんですが、要検査などの指摘事項があった際には早めに受診し、解消しておきましょう。

事前準備で満足度の高い住宅購入を

住宅購入を検討しはじめたら、まずはライフプランを作成し、家計の全体像を把握した上で資金計画を行いましょう。

ライフプラン作成の際に専門家であるファイナンシャルプランナーの視点を入れると、自分では気づけない住宅購入に関わるリスクに気付ける、住宅資金計画に対してより効果的な対策が見つかる、などの効果も期待できます。

実際に購入が決まると、住宅ローン、資金計画、団信や保険はどうしたらいいか、など考えるべきことが次々と出てきます。初めて直面することばかりで判断に悩むことも多いでしょう。

住宅購入は資産になる大事な買い物だからこそ、最善の選択をしたいものです。そのためには、ライフプランを作成して今からできることを明確にし、備えておけると安心ですね。

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