国内初、SL大樹にバイオ燃料 東武鉄道、CO2排出量削減へ

保火作業の燃料の一部をバイオ燃料に置き換えるSL大樹(東武鉄道提供)

 東武鉄道と子会社の東武商事は25日、日光・鬼怒川エリアで運行する「SL大樹」の燃料の一部を従来の石炭から植物原料由来のバイオ燃料に置き換える実証実験を行うと発表した。運行時以外でボイラーの燃焼を続ける作業「保火(ほか)」で使う石炭の一部をバイオ燃料に変更する。SLへのバイオ燃料使用は国内初。ディーゼル機関車「DL大樹」では、燃料の軽油をバイオディーゼル燃料混合軽油に変更する。期間は31日から約1年間。

 SL大樹は鉄道産業文化遺産の保存・活用と地域活性化を目的に、下今市駅を起点として鬼怒川温泉駅間と東武日光駅間をそれぞれ運行している。実験は二酸化炭素(CO2)排出量を削減し、SL運行の持続可能性を高めるため取り組む。

 検証を行う「保火」は、車両の検査や修繕、工事を行う期間を除き常にボイラー内の石炭を燃やし続ける作業。圧力を維持しボイラーを保護するためで、SL大樹は下今市駅構内の機関庫内で実施している。

 東武鉄道は現在、3両のSL大樹を運行。実験ではこのうち2両の保火で使う石炭の一部を、木くずやそばがらなど植物由来の廃棄物で作った燃料「バイオコークス」に置き換え、燃焼効率やボイラーの影響などを検証する。走行時は通常の石炭を使用する。

 保火では年間約160トンの石炭を使うが、このうち約40%をバイオコークスでまかなう。CO2の排出量を年間150トン削減できる見通し。

 DL大樹は2両運行するうちの1両で、燃料として年間約4万リットル使う軽油を全てバイオディーゼル燃料混合軽油「B5」に変更する。B5は廃食油由来のバイオディーゼル燃料を5%配合した燃料で、内燃機関への影響などを調べる。変更で年間約2.5トンのCO2削減を見込む。

 検証期間中はSLのナンバープレートとDLの所属札を緑色に変更する。結果を踏まえて今後の運用方針を検討する。

 同社の担当者は「運行で生じるCO2を少しでも減らすことにつなげたい」と話した。

走行時の燃料をバイオディーゼル燃料混合軽油に置き換えるDL大樹(東武鉄道提供)
SL大樹の保火作業で使うバイオコークス(東武鉄道提供)

© 株式会社下野新聞社