ハミルトンのモチベーションを称賛するアリソン。TDに復帰した彼自身もメルセデスF1に好影響を与える

 ジェームズ・アリソンがメルセデスF1のテクニカルディレクターに復帰したことで、厳しい過去2年間を経たチームの全員がふたたび活力を取り戻したようだ。

 ドイツメーカーのチームは2014年以来、グランプリシーンを支配していたため、レッドブルの競争力からかけ離れたマシンで戦うことは、チームのほとんどのメンバーにとって新しい経験だった。元テクニカルディレクターのマイク・エリオットは優れた才能と技術的理解を持ち合わせているが、彼は静かで非常に内向的な人物であり、周囲の人々をやる気にさせることはできなかったようだ。

 対照的にアリソンは非常に陽気な性格で、つねに途方もないエネルギーを持って、それを一緒に働く周囲の人間にももたらした。『W14』のシャシーに重要な変更を加え、フィールドで2番目に速いマシンに変える以前から、彼がチームの士気に与えた影響は顕著だった。

 レースから離れると、ほとんどの時間を他のビジネス上の関心事に取り組んだり、過激なスポーツを楽しんだりして過ごしているルイス・ハミルトンでさえ、かなりの期間、チーム内のモチベーションがそれほど高い状態ではなかったことを認めている。

 今度はアリソンがドライバーを称賛する番だ。彼はハミルトンがこれほどの成功を収めたにもかかわらず、さらなる勝利とタイトルを渇望しているという事実に感心していることを認めた。

 アリソンは「グリッドのどこにいても、モチベーションのないドライバーを見つけるのは難しいと思う」と語る。

「意欲のようなものは彼らと同じ領域にあると思う。そして一般的に言えば、ドライバーが成功すればするほど、勝利への強迫観念は避けられないものになる」と彼は説明した。

「ルイス(・ハミルトン)の場合、それは彼が誰であるかという核心部分であるに過ぎない。だから、勝利の道に戻るための彼のモチベーションに疑いの余地はない。しかし、彼がそれを成し遂げられるかどうかは、彼自身の手よりも我々が彼に与えたマシンに委ねられるだろう。彼はつねにその能力を持っていた」

■シーズン前に求められるドライバーのふたつの仕事

 来シーズンを見据えたアリソンは、2024年型のマシンである『W15』を勝てるクルマにするために、これまでにドライバーがチームのために手を貸せることは何もなかったと認めている。

「冬の間の彼らの役割は、主に体調を管理することだ」

「彼らが精神的に準備ができていることを確認し、我々がマシンの仕様を定め、製造し、テストをしてドライバーのためにクルマを用意をしていくなかで、成功したことと失敗したことについて連絡を取り合うだけだ」

「1年のうちで彼らが、我々がやっていることを観察する以外の役割を果たせる時期ではない」

 しかし、アリソンが説明するように、その後状況は変わっていく。

「マシンが走り出し、クルマが我々に話しかけてくると、ドライバーは(クルマと技術チームをつなぐ)通訳になるんだ」と同氏。

「すると彼らの声ははるかに大きな重みを持ち始める。だから冬の間は、彼らは新しい挑戦の準備をしているというわけだ」

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