D.B.Inches - 絶対的透明感とパワフルなグルーヴ感を併せ持つオルタナティブ・ロックバンド、新宿LOFTに初登場!

最初はどこかにいる弾き語りの女の子みたいな感じのことをやっていました

──見た感じバラバラの4人だなと思うのですが(笑)、どういう風に集まってバンドを結成したんですか?

スギモト:私がもともとバンドをやりたいなと思って、2019年とかコロナ入りたてぐらいのときにサークルの人とか誘って、ギターの子と、トワ(ヨシダ)君と、ドラムの子の4人でやっていたんですけど、2人抜けちゃって2021年に一度解散しているんです。その後にOURSOUNDSっていうメン募の掲示板みたいなアプリで募集して、最初にドラムのイチカワ君がTwitterで連絡くれて、その後にカズ(フクタニ)君が応募してきてくれて再開しました。

──応募した決め手はなんだったんですか?

イチカワ:上がっていた音源を聴いて、いいなって。でも別に音楽性がとかじゃなくて、声聴いて「これだな」って思いました。

フクタニ:聴いたときにいいなって思ったのはもちろんなんですけど、自分がギターを乗せたらもっと良くできる自信があったので応募しました。

──最初は弾き語りをされていたんですよね?

スギモト:そうですね。そのときはポップスっぽい曲を作っていました。全然オルタナティブっていう感じじゃない。どこかにいる弾き語りの女の子みたいな感じのことをやっていました。

──そのとき描いていたバンドサウンドは、今みたいなインディーロックとかオルタナティブな音楽性だったんですか?

スギモト:そうですね。空間系の感じにはしたいなって思っていました。

ヨシダ:当初はtricotとかそういうマスロックなバンドとか、シューゲイザー的要素、きのこ帝国とか、羊文学みたいなのがスギモトとその前のギターの子がめっちゃ好きで、そういう楽曲を目指して作っていました。今はUK / USのインディーポップとかがベースになっています。

──みなさんのルーツになっている音楽や映画など教えてください。

スギモト:YUIちゃんがずっと好きで、FLOWER FLOWERとか、昔は父親の影響でaiko、絢香さん、浜崎あゆみさん、安室奈美恵ちゃんとか、2000年代ポップス歌姫の人たちの曲をよく聴いてたんですけど、今は海外のインディーロック、Snail Mail、beabadoobeeとか聴きつつ、曲全体のサウンドはシューゲイザーが好きです。My Bloody Valentineから派生してDIIV、Slowdiveとか、Spotifyのシューゲイザーのプレイリストでこの曲いいなって、聴いています。

フクタニ:小学校1年生のときにポケモンのCDを買いに行ったんですけど、エアロスミスの『Nine Lives』っていう挑戦的・実験的なアルバムのジャケットがめちゃめちゃカッコ良かったので、買って聴いたのがロックを聴くようになったキッカケです。アニキの影響でゆらゆら帝国とかレッチリとか、あと音楽番組で神聖かまってちゃんが出てて「うわー! ヤバっ! バンドってすごいな」って思って、高校1年生で軽音部に入りました。ハヌマーンの山田亮一は“先生”って呼んでます。ギターより思想的に影響を受けたっていう感じです。好きな映画は、『ホステル』、『冷たい熱帯魚』とか、園子温系。漫画もガロ系っていう『少女椿』とかエログロが大好きで。元旦は『ムカデ人間』を一気観しました。

ヨシダ:最初に聴いたのはBUMP OF CHICKENだったんですけど、「モーターサイクル」の働いて寝て終了、みたいな、息してるだけ、みたいな陰鬱とした歌詞に衝撃を受けました。あと80年代〜90年代のUKロックが大好きで、ブリットポップとか、マンチェスター、ポストパンクとか。今はUSインディー、Momma、Snail Mail、Slow Pulp、Alvvaysとかをめっちゃ聴いてますね。

イチカワ:僕も最初はトワ君と一緒でBUMP OF CHICKENとかだったんですけど、大学に入ったタイミングでヴィレッジヴァンガードのバイトをし始めまして、店内でメロコアとかハードコア寄りの音楽がすごい流れていたんです。メロコアだったらLABRET、ハードコアだとENDZWECK、あとheliotropeっていうピアノボーカルの3ピースのバンドの曲を聴いたときに、ボーカルのメロディに対して曲がめちゃめちゃハードっていう、パンク畑とハードコア畑の人たちが集まってできてる一つのアンサンブルにめちゃくちゃ衝撃を受けて。僕もD.B.Inchesで、このバンドに迷惑がかからない程度にそういうエッセンスを散りばめて行ってます。あと、USのポップパンクとか、最近は、Chunk! No Captain Chunk! 、Rocket of the Bulldogs、bachoが好きです。

ここまで反響を頂けるとは思っていなかったです

──活動し始めたときはコロナであまりライブなどできなかったと思うのですが、どういう活動をされていたんですか?

スギモト:Logicで曲を送り合ったりとか、たまにスタジオに入れるときに入っていました。

ヨシダ:そのとき住んでたマンションの真隣がスタジオで、そこにずっとこもっていました。メンバーもまだ3人しかいなかったときで。デモ作ったら3人でその曲をずっと3時間とかやり続けていました(笑)。

──去年の8月にリリースされた1st EP『Instinct, Filter Bubble』は、インディーロック、シューゲイザー、ドリームポップなど海外のオルタナティブな雰囲気もあり、ギターのリフやボーカルのメロディに日本ぽさを感じる部分もあって、4人のルーツが詰まっているアルバムですよね。全体的に共通している絶対的な透明感と、スギモトさんのピュアなボーカル、リズム隊のグルーヴ感など、先日ライブを拝見した際にも感じたのですが、一見アンバランスに見えて、それぞれの役割や個性がハッキリした絶妙なバランスの良さを感じました。曲はスギモトさんが全て作っているんですか?

スギモト:弾き語りの状態までは自分で作って、曲の感じを一回共有してからアレンジはトワ君がやってくれています。その後スタジオ入って変えるところは変えたりします。

── 一番の勝負曲はどれですか?

ヨシダ:「That I」はパワーのある曲ですね。最も国内外問わずいろんな人に聴いてもらえている曲です。

──90年代のオルタナっていう感じですよね。グルーヴ感があって、ギターが気持ち良さそうに舞っているような。

ヨシダ:最初、弾き語りが上がってきたときに、一番早い段階でイメージが出来上がった曲ですね。コードが2つしかないんですよ。最初はサビが違っていて。レコーディングする直前ぐらいまで全然違う歌詞でした。

──この曲だけ英詞ですよね。

ヨシダ:もっと全然盛り上がんない感じのサビだったんですけど、それをガッ、と変えてグッ、と締まった感じがあります。

スギモト:この曲のおかげでいろいろできることが増えてきたなって思います。

イチカワ:演奏してて超気持ちいいです。

ヨシダ:飛び回りすぎてボールになるぐらい(一同笑)。

フクタニ:弾いてて楽しい確かに。コードが2個っていうのがうちは多くて。コードが2個だから自由が効くから、こんなんやっちゃおうとか、ライブでアドリブ入れられたりするのがまた楽しいところですね。

── 一番苦苦労した曲はどれですか?

スギモト:「Fake as a Girlfriend」。たくさんフレーズを考えてもらったイメージがある。

ヨシダ:わりとどの曲もすんなりできたんですけど、「Fake as a Girlfriend」は、最初作った時点でコードの解釈みたいなのが全員バラバラで、レコーディング当日にコードを組み直したんです。自分ら理論が全く分からない状態で曲を作っているので、そういうのはめっちゃ大変でした。

──「soft」は、緩急のあるエモーショナルな曲ですよね。深海に潜っていくような、心象風景を映像化したようなドラムのイントロから、シューゲイザーな轟音サウンドに展開していく。

イチカワ:分解して聴くと一つの曲とは思えないですね。

ヨシダ:確かにすごいいろんなことをやってるかもしれないですね。

──「Hikari」もキラキラした浮遊感のある後半への展開など、すごく映像的ですよね。

スギモト:めっちゃ好きです。

ヨシダ:あの曲も最初コード2個しかなくて無理やり付け加えたんです。あのアレンジは面白かったですね。

──EPタイトル『Instinct, Filter Bubble』の「Filter Bubble」は、「自分の見たい情報しか見えなくなる」という意味だそうですが、このEPの曲はどれも人と相容れない、気持ちのすれ違いを歌詞に書かれています。そういう風に感じることが多いんですか?

スギモト:非常に多いです(一同笑)。

──というより、人から誤解されるほうが多いですかね?

スギモト:そっちのほうが多いですね。人に伝わらないっていうか、伝えたい気持ちはあるんですけど。メンバー間でも全然あります(笑)。語彙力がないのか、多分しゃべり方が文法的におかしいみたいでなかなか伝わらない。

ヨシダ:脈絡がないよね。

イチカワ:主語がない。

──(笑)でも、先ほどから男性陣がスギモトさんの発言をフォローする姿に仲の良さを感じます。EPのリリースから半年経ってライブでも結構演奏していると思うんですが、改めてこのEPどうですか?

ヨシダ:ありがとうございます、っていう感じです。フィジカルで出して1枚目、初の作品集。超うまくいった。自信を持って送り出せました。

スギモト:ここまで反響を頂けるとは思っていなかったです。でも、いろんな人が聴いてくれて、すごく嬉しいです。

フクタニ:めっちゃいいと思います。

──弾き語りをしていた頃に思い描いていたバンド像と一致していますか?

スギモト:それは全然一致してない(一同笑)。

ヨシダ:いい意味でね。

スギモト:ギターは女の子がいいなって思ってたら全然男の子で(笑)。でも、うまくやっていけてるなって気持ちはあるんで、今後もうちょっと幅広くやっていけたらもっと嬉しいなって思います。

ヨシダ:やれることのレンジを広くしていきたいですね。

国境を越えた横のつながりを今年はもっと増やせればいいなって思います

──タイのフェスはどうでした?

スギモト:めっちゃ楽しかったです。

ヨシダ:めちゃくちゃ楽しかったです。貴重な経験ですね。INTERPOLとか、この先もう絶対対バンできないだろうなって人と対バンしたし、ありがたいことにライブも盛り上がりました。

スギモト:盛り上げようとしてくれてるなって思いました。トップバッターだったんで。私自身も観客の一人にさせられてるような感じがあるぐらいすごい温かい人たちでした。

──今後の展望や、今年の予定など教えてください。

ヨシダ:海外に行くってすげぇハードルが高いものだと思っていたんですけど、今回タイで仲良くなったバンドもいるんで、国境を越えた横のつながりを今年はもっと増やせればいいなって思います。タイのバンドに限らずですけど、海外のバンドが日本に来て一緒にやるのもいいですし、我々が行くのもいいですし、そこに友達のバンドもたくさん一緒に出演できたらいいですね。

スギモト:今年はまたもう1回盤を作りたいって思っています。あと、ライブをワンマン、2マンぐらいで自分たちで組んでいけたらいいなって。海外で仲良くなったバンド+日本の友達のバンドと一緒に海外にも行きたいですね。それができそうだなって思ったので、より行きたいなって思いました。

──2月1日新宿LOFTのライブ出演に向けて意気込みをお願いします!

スギモト:とにかく、集中(一同笑)。LOFTに出るの初めてなので、どういうハコなんだろう、どういう音なんだろうって楽しみです。

イチカワ:『ぼっち・ざ・ろっく!』が大好きなんで、楽しみです。

ヨシダ:LOFTは歴史もかなり長い、数々の伝説系のバンドさんが出てて憧れではあったんで、フロアの段になってるところを音圧で平らにするぐらいの気持ちで演るんで、よろしくお願いします。

フクタニ:東京来る前名古屋住んでて、普通に社会人やってたんですけど、東京にライブ観に行くってなったら大体新宿のナインスパイスとか、LOFTで。まさか自分が出るなんて思ってなかったんで、かなり楽しみです。

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