メリットは収益増強、経費削減 荘内銀、北都銀合併へ

荘内銀行と北都銀行の合併に関して説明する(左から)松田正彦荘内銀頭取、新野正博フィデアHD社長、伊藤新北都銀頭取=仙台市

 フィデアホールディングス(HD、仙台市)は25日、傘下の荘内銀行(鶴岡市)と北都銀行(秋田市)の2026年度中の合併を目指し、具体的な検討を進めると発表した。合併すれば、東北で初めて県をまたいだ広域地方銀行となる。山形、秋田両県の人口減少による経営環境の変化を受け、さらなる経営効率化が必要と判断した。

 同日開催したそれぞれの取締役会で決議した。新銀行名、本店所在地などは3月までに設置する合併準備委員会などで協議し、発表する。今後は基本合意、合併契約、両行の株主総会での決議を経て、国の合併認可を受ける。

 23年2月に北都銀行が公的資金100億円を完済したことや、勘定系システムのコスト削減が理由。組織や人員配置を見直し、捻出した人材は営業分野などに振り分ける。観光分野に強みを持つ荘内銀行と、洋上風力発電を推進する北都銀行それぞれの得意分野を共有する。

 持ち株会社のフィデアHDは維持する。24年3月期の業績予想に変更はない。

 仙台市で同日、記者会見を開いた。同HDの新野正博社長は「地域のために地域と共に成長する広域地方銀行を目指す。優れた人材を一体的に有効活用し、積極的、主体的に地方経済の活性化に貢献する」、松田正彦荘内銀頭取は「名実ともに一つになれば、経験値や強みがもう一段深いところで融合する」と話した。

 両行は09年にフィデアHDの下で経営統合し、営業ノウハウの共有や本部機能の一本化、関連会社の統合など経営効率化を進めてきた。

記者会見一問一答  フィデアホールディングスの新野正博社長、荘内銀行の松田正彦頭取、北都銀行の伊藤新頭取は25日、仙台市で記者会見を開き、県境を越えた広域地方銀行のメリットを強調した。以下は主なやりとり。

 ―なぜ今のタイミングで合併なのか

 新野氏「経営統合の段階から合併の選択肢はあった。統合戦略を進める中で公的資金を返済でき、機は熟したと判断した。山形、秋田県の人口は2050年には3~4割減る推計があり、もっと地域振興、産業振興に取り組まないといけない。1銀行1システムにすることで基幹系システムに関わるコスト、リスクも軽減できる。そうして生み出された果実を投資に割り振っていくのが、地方銀行としての定めと考えた」

 ―荘内銀行の強みは

 松田氏「庄内には歴史的建造物が多く、出羽三山などのスポットに恵まれ、ポテンシャルの高い観光資産を軸にした応援に努めてきた。多彩な分野の専門家を招聘(しょうへい)し、高度な知識、ノウハウを持った人材も強みだ」

 ―県境を越えた合併のメリットは

 新野氏「収益増強と経費削減の2点を想定する。同じ県同士の合併ではなく重複店舗の統廃合による効果はないが、重複している本部機能を一本化することで、余力が出た人員を営業部隊、特に成長分野に回して、顧客部門の収益性向上を図る。市場部門では運用資産が大きくなれば、運用効率が上がり、収益性の向上につながる」

 ―合併により各銀行の「地元」がぼやけないか

 松田氏「庄内を大事に、山形全体でも活動してきたが、仙台にもブランチがあり、秋田にも支店があった。出身地と今活躍している所は時代によって変わっていく。東北一円には違和感がない」

 伊藤氏「人口3~4割減は目の前に迫っており、銀行もそうだが、顧客も広域経済圏の視点でいかないとという思いが強くある。秋田、山形を大事にしながら、広げていくことが新しい銀行のコンセプトになるのでは」

 ―新銀行の名称について

 松田氏「荘内という名前は昭和16年から使用しているので、顧客も慣れ親しんできたが、将来を考え、どういう銀行を目指すのかが大事。温故知新ではないが、いいものは残し、新しいものは発信していく考え方からすると、ゼロの状態で協議を開始したい」

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