【裏金事件・解説】安倍派幹部なぜ立件されず?再発防止は…元衆院議員、元東京地検特捜部の若狭弁護士に聞く

元衆議院議員であり、元東京地検特捜部・副部長でもある若狭弁護士に伺います。

自民党の裏金事件をめぐっては、26日、収支報告書への未記載が4800万円で逮捕されていた安倍派の池田よしたか議員が起訴されました。この池田議員は、記録媒体を壊すなど資料の廃棄を秘書に指示していたとみられることもわかっています。

安倍派では、未記載の額が5000万円超の大野議員は在宅起訴、未記載の額が4000万円超の谷川議員は略式起訴となっていて、このほかに、派閥の会計責任者なども立件されています。一方で、静岡8区の塩谷座長など安倍派の幹部などは未記載の金額を本人たちがそれぞれ公表しているものの、政治資金規正法違反で立件されることはありませんでした。

元特捜部の若狭さん。安倍派の幹部はなぜ立件されなかったのはなぜでしょうか?

(元東京地検特捜部 若狭 勝 弁護士)

「未記載額が比較的少額だった。私が特捜部副部長をやっていた時も、1000万2000万円くらいだと、不起訴にしたということがあった。

市民感覚からはズレてはいるが、検察とすると、選挙で選ばれた議員の資格を、検察の一方的な判断で失わせることはすべきではない、バランスを保つべきだということと、こういう問題について、今度は有権者が選挙できちんと投票して決めてもらうというスタンス」

そんな中、26日に新たな動きがありました。市民団体が、立件されないのはおかしいと、安倍派の幹部7人と会計責任者について検察審査会に審査を申し立てました。検察審査会は国民から選ばれた審査員が検察の不起訴処分が妥当かを判断する機関で、「起訴相当」の議決が出ると再捜査が行われることになります。

若狭さん、この申し立てでどのような動きが出でますか?

(元東京地検特捜部 若狭 勝 弁護士)

「検察審査会というのは、検察が不起訴にした処分が妥当かを判断する、一般の有権者から無作為で選ばれた人で構成される団体。そこで審査をして、一般市民の感覚では起訴すべきだということになると「起訴相当」と議決する。そうすると、検察が再捜査します。再捜査したけれど、もう一度、不起訴にした場合は、また検察審査会に戻る。そして、もう一度、検察審査会で同じように起訴相当だということになると、検察の意思とは関係なく、強制的に起訴される」

そうなると、もしかすると刑事責任を問われることになるのかもしれない?

(元東京地検特捜部 若狭 勝 弁護士)

「そうですね、金額が1000万2000万円ですと、一般市民の感覚では起訴すべきだという意見が出されることがあると思う」

通常国会も始まり、再発防止に向けた動きが注目されていますが、自民党は政治刷新本部の「中間取りまとめ」を正式に決定しました。

人事とカネの機能をなくすとして、派閥による政治資金パーティーを禁止し、派閥が閣僚や党役員の人事で推薦することも禁止するなどしました。派閥の「全面解消」は盛り込まず、「政策集団」として存続することを容認しています。

一方で、盛り込まなかったものもあります。

・違法な会計処理があった場合に議員本人も責任を負う「連座制」の導入は盛り込まれず。

・党から党幹部らに支出される政策活動費の使途公開についても言及はありません。

若狭さん、中間報告ではありますが、盛り込まれなかったものこそ、盛り込むべきだと思いますが?

(元東京地検特捜部 若狭 勝 弁護士)

「政策活動費がブラックボックス、5年間で50億円くらい使途が分からないと、ここに食い込まない以上、政治刷新本部というのはかたちだけになっているのでは?となる」

どうすれば、議員本人が責任を問われる?

(元東京地検特捜部 若狭 勝 弁護士)

「収支報告書に政治家も署名させればいい。いまは会計責任者だけが署名をして提出している。政治家に署名させれば、ダイレクトに政治家に責任追及できるかたちになるので、それは難しいことではないし、やるべきだと思います」

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