【能登半島地震】「通常の本人の様子ではない」 被災地で支援者の支援に当たった精神科医が激白

テレビ愛知

能登半島地震の被災地でさまざまな支援が続いています。そんな中、派遣期間を終えた愛知県の職員が1月26日、大村秀章愛知県知事に活動を報告しました。派遣された精神科医が語る「支援者の支援」とは。

報告したのは愛知県から派遣された9人の職員です。避難所の運営や給水業務など、それぞれの活動内容を大村知事に報告しました。

その中には、被災地での精神的なケアなどを目的に派遣された医師が。愛知県精神医療センターの精神科医、平澤克己副院長です。

平澤さんは災害派遣精神医療チーム=DPATの一員として1月4日から8日まで活動しました。

石井アナ「DPATというのは、どんなことをするんですか?」

平澤医師「DPATは精神科医が入っていて、看護師も入っている医療のチームなので、地元の医療を復興させるようにしましょうというのが1つ目の柱。もともと精神科の治療を受けていた人たちの診療を支援するというのが2つ目の柱。3つ目が、災害によって新たにストレスとかいろいろな要因で、精神的な症状が出た人への治療を行う。支援者支援と言っているが、例えば行政職員・学校教員・病院職員だったり、自分たちが被災しているけれども、他の被災者のために使命感を持って非常に頑張らなくてはいけないというところがあって、かなり過重なストレス・疲労が重なるということがあるので、その人たちをきちんと支援する(のが4つ目)」

平澤さんが、今回の派遣で特に携わったのが“支援者支援”でした。

平澤医師「保健師を訪ねたんですね。穴水町全体の被災状況や避難所の状況・健康状態を把握する立場の保健師だけど、テンションが高めで、気分は高揚して、しゃべり口も早くて、いろんなところを小走りで歩きながらずっと話していたりとか。本当に活動的に動いていたので、これは通常の本人の様子では多分ないだろうと思いました。そこは精神科医の目から見てそう判断しました」

発災直後は被災者を支援する人の多くが、この保健師と同じような精神状態になるといいます。

平澤医師「心の中ではいろいろな思いがあると思うんですけど、なかなか表に出せないと思う。つらいと言ったり、苦しいと言ったりする場所もなかなかないですし。業務をしなきゃいけないという使命感と、そういう(業務をしなければならない)立場におのずとなってしまうというか、ならざるを得ない。自分がやらなければ、他の人に代われない」

石井アナ「そういう人をご覧になって、平澤さんはどんなサポートをされたんですか?」

平澤医師「その人の業務をどうやって調整してあげたりとか、あるいは少しでも軽減できたりとかすることがなければ、本質的には本人は休まらないと思うんですよね。行政の手伝いの職員が入ってくれれば、その人の仕事は少し減るかもしれないじゃないですか。そういう支援をたくさん入れながら、その人の業務を減らしていくことを考える」

石井アナ「てっきり皆さんは心のケアをされるんだと思っていたんですが、実際にはそれとは別の作業もしているということなんですか?」

平澤医師「心のケアっていうのが、そんなにすぐ受け入れられるわけではない。バリアというか、『別に自分は心のケアは大丈夫です。精神的には大丈夫です』と皆さん言いがちで、心の面での不調を訴えにくい、言いにくいというのが、全体的な環境としてそもそもあると思うんですね。本人のニーズとか、困っている直接なところからしっかり支援をしていって、それで十分賄えてしまえばそれでOKなので。そうじゃなくて、支援をしていくけども、でもやっぱり最終的にメンタルとか心のケアが必要だっていうときには、われわれがしっかり支援すればいいと思います」

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