ゲップを我慢し過ぎて心不全…まさかの死因を2万体を検死・解剖した法医学者が明解に解析

ゲップとはいえ、我慢して体内に体内にため込むと恐ろしいことに(farmer / PIXTA)

親族や知人の訃報を聞くと、覚悟はできていても悲しいものだ。時には元気だった人が突然、亡くなってしまうこともある。誰しも「死」とは隣り合わせ。それなのに、知っていることは少なく、なんともミステリアスだ。

本連載では、そんな「死」の現実や不思議について、2万体を検死・解剖した法医学の第一人者が多様な角度から切り込み、解説する。

「ホントに?」「へぇ~」「まさか」…。知れば知るほど、「死」の奥深さを実感するーー。

第1回は、「ゲップを我慢したら死ぬ?」。普通なら考えられない死のメカニズムを経験豊富な法医学者が解き明かす。(全5回)

※ この記事は上野正彦さんの書籍『人は、こんなことで死んでしまうのか!:監察医だけが知っている「死」のトリビア』(三笠書房《知的生きかた文庫》)より一部抜粋・構成しています。

ゲップを我慢することのリスク

以前、冷たい炭酸飲料を一気飲みし、ゲップを出さないように我慢していた少年が死んだことがあった。直接の死因は心不全と報道されていたが、ゲップを我慢するというのはそんなに危険なことなのだろうか?

そもそもゲップとは、ご飯を食べるときに、大量の空気を同時に吸い込んだために起きる現象だ。胃袋に溜まった空気が外へ出ようとしているのだから、我慢する必要はない。出たがっているものは出してやればいい。

逆に出さないということは、胃の中が膨らんだままでいるわけだから、そのぶん近くにある心臓が圧迫されていることになる。当然のことながら、心臓の状態が良くない人にはかなりの悪影響を及ぼすことになる。

胃の膨らみによる心臓への圧迫

先の死んだ少年も、心臓にどこか異常があったのではないだろうか? ただでさえ、胃から喉まではストレートになっているので、普通ならゲップは我慢できずに出てしまうもの。

しかも、ふつうの空気ではなく、炭酸ガスから発生したものが充満しているわけだから、それを我慢するということは胃の膨らみで、心臓への圧迫は相当なものになっている。異常を抱えているときに、それだけの負担がかかれば、心臓の具合が悪くなるのも当然といえよう。

だから少年は、表面的にはゲップを我慢したために死んだように思えるが、あくまでもそれはきっかけにしか過ぎなかったのである。

医学的にみたゲップと心臓発作の関係

医学的に説明すると、膨らんだ胃袋の上に乗っていた心臓が、圧迫されることで正常に動けなくなり、窮屈な感じで動くようになってしまった。それが結果として心臓の発作を誘発したと考えられる。

人前で出すゲップは行儀が悪いかもしれないが、出そうになったらこっそりとでも出しておいたほうがいい。命には替えられない。

ちなみに、食べ過ぎでお腹がパンパンに膨らむことがあるが、これもゲップ同様に心臓に負担をかけることになるので気をつけておこう。

© 弁護士JP株式会社