明石市の金庫から消えた生活保護費203万円 当時の市長、泉房穂氏が全額弁済「本来払うべきは犯人」

明石市役所=明石市中崎1

 2019年8月に兵庫県明石市生活福祉課の金庫からなくなった生活保護費約203万円について、泉房穂前市長が全額を弁済していたことが26日分かった。金銭債権の時効(5年)が8月に迫っていた。

 県警明石署は窃盗事件として捜査しているが、容疑者は分かっていない。市は19年度以降、紛失金を一般会計決算で「収入未済額」として処理してきた。

 窃盗事件の公訴時効は7年、さらに犯人への市の賠償請求権は20年続くが、金銭債権の効力が時効により消滅すると決算書には記せなくなるため、現副市長ら職員有志が弁済資金を集める会を昨年結成。12月末、泉氏に声をかけると、全額弁済すると伝えられた。

 現職市長は公職選挙法によって選挙区内の団体などへの寄付行為を禁じられ、給与減額で対応する場合には条例改正が必要になる。退任によって弁済しやすくなったことが背景にある。

 市は再発防止策として防犯カメラを設置し、現金保管のマニュアルを見直すなどした。今後も捜査に協力を続ける。

 今月9日に入金した泉氏は「事件当時の市長が最終責任を負うのは当然のこと。タイミングが来れば自分が全額弁済するつもりでいた」とし「本来払うべきは犯人。警察に頑張ってもらいたい」と事件解決へ期待を込めた。(松本寿美子)

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