どうなる2024年の家計、話題の新NISAはやるべきか?経済の専門家3人が徹底議論

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは、3人の経済専門家とともに2024年の日本経済や家計負担について議論しました。

◆2024年、家計の負担はどうなる?

第一生命経済研究所 首席エコノミストの永濱利廣さんがまとめた今年予定されている家計への影響が伺える動きを見てみると、負担増となるのは「生前贈与の加算期間延長」、「高齢者の介護保険料増額」、「森林環境税」。対して、負担減は「4万円の定額減税」、「新NISA制度開始」。

これだけ見ると負担増のインパクトがありますが、永濱さんは「4万円の定額減税が大きいのではないか。高齢者の介護保険料増額もあくまで所得の高い方で、むしろ所得が低い高齢者は負担が減る」と解説。

では2024年、家計にとって明るい兆しはあるのか。コメンテーター・ゲスト陣に聞いてみると、「ある」と答えたのは、キャスターの堀潤と経済アナリストの池田健三郎さん。「ない」と答えたのは経済ジャーナリストの荻原博子さんと紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さん。そして、永濱さんは「人による」。

「ない」派の荻原さんは「賃金は上がるが、それは人手不足だから。子どもの教育資金がかかる50代は上がらず、さらに物価が上がる可能性もある」と危惧します。

一方、「ある」と答えた堀は「政府が変わるんじゃないか。岸田政権は分配から投資と言っていたが、なかなか投資するための原資が得られない。その失敗をアップデートした政策を打ち直してほしい。刷新していただきたい」と希望を述べます。

◆お金は動かさないと負ける!?

永濱さんの分析によると、物価は前年比2%半ば上昇するものの、昨年は3%以上だっただけに物価高はやや鈍化。その分負担は軽減しますが、それでも1人頭約2.9万円、4人家族になると約11.4万円の負担増。定額減税の4万円がありますが、これはあくまで今年だけの措置になります。

定額減税に関して池田さんは以前、「その後に増税がある」と指摘していました。そして、ここでも「当然、今後国に(税金として)取られる。だからこれを投資に回して増やしておかないといけない」と注意を促し、「今まではデフレだったが、世の中がインフレに変わっている。インフレになるということはお金を寝かせておけば目減りする。誰でもお金を動かさない限り負ける。お金は動かさないといけない」と主張します。

荻原さんが危惧していたのは"2024年問題”。物流業界の人手不足が加速すると言われており「今年は運輸が大変なことになる。同時にそれは家計にも影響する」と明言します。

街頭で家計の負担を減らすためにしている努力を聞いてみると、「外食の回数を減らす」、「余計なものを買わない」、「食費の節約」、「教育費の再考」など、さまざまな声が挙がります。

総じて永濱さんは「これでは景気は良くならない。みんなが節約してしまえば景気は悪い。これが続くと厳しい。これだからこの30年間、日本の経済はダメだった。もっと積極的にお金を使ったほうがいい」と見解を示します。

ここで堀からは、「もし財務大臣の立場だったらどんな財政政策を行うか?」との質問が。阿部さんは「子ども・若者に全振りする」と断言。

池田さんはまずバラマキ政策をやめ、より自由な経済活動の推進。荻原さんは「今と反対の政策。今は(税金など)取るほうは厳しく、出る(使う)ほうは緩い。それを逆にする。出るほうは精査し、いらないものは弾いて取るほうを少なくする」と言います。

また、「国家がやるべき投資とは?」と疑問を呈する堀に対し、永濱さんは「世界的な潮流になっているが、民間だけに任せていたら進みにくい大事な分野が出てきていて、例えば、環境やデジタル、経済安全保障などにアメリカやヨーロッパ、中国も積極的に投資している。そうしたところは費用対効果も高いので日本もそうすべき」と返答。また、半導体を含む世界的に重要な物資への投資も大型投資になるとも話していました。

◆新NISAはやるべきなのか?

続いて議論は、昨今話題の"新NISA”について。NISAとは最低100円からできる投資で、非課税であることが大きなメリットでしたが、それが今年から拡大。既存の「積立NISA」は投資できる金額が年間40万円で20年間非課税。「一般NISA」は年間120万円までで5年間非課税でした。これが新NISAになると「つみたて投資枠」が年間120万円、一般NISAにあたる「成長投資枠」は年間240万円まで投資可能で、どちらも無期限で非課税になります。

では、このNISAはメリットとリスクどちらが大きいのか。永濱さんは「メリットが大きいと思うが、使い方に注意。初心者は成長投資枠で一気に投資するのは危険。私ならつみたて投資枠で毎月少しずつ、世界株かアメリカのインデックスファンドに投資する」とポイントを説明。なぜなら、世界株は下がることもあるものの、長期的に見れば上がっていくと永濱さん。ただ、「もしNISAをまだやっていないのであれば、確定拠出年金を先にやったほうがいい。所得が控除される」とコメントしました。

荻原さんはNISAに反対。「皆さん(株価が)右肩上がり前提だが、ここ30年で右肩上がりは10年、右肩下りが20年あり、これから右肩下がりになる可能性もある」、さらには「NISAの一番の欠点は下がった時に普通の投資よりもダメージを受けやすい。普通の株は買い増してコストを下げることができるがNISAは(購入できる)枠が決まっているのでコストを下げていくことが難しい」と異論を唱えます。

※投資は元本割れなどの損失が生じる可能性があります。自身の責任のもと、可否を判断して実施してください。

◆2024年、専門家が推奨する家計の防衛策は?

最後に、今回の議論を踏まえ、今年オススメの家計防衛策を発表してもらうことに。池田さんは"自分のバージョンアップ”と"ドルにも目を向ける”の2つ。給料を上げるためには自分の価値を高め、自分自身を磨くことで可能性は広がると言い、さらには円だけでなく外貨にも目を向けることを推奨します。

池田さんの意見と同様、堀は個々の付加価値を上げることの必要性を挙げ、"一人当たりGDPを上げる”と主張。そうすることで「結果、自己実現や家計防衛策に繋がるのではないか」と述べます。

荻原さんは、"ミニマリスト(幸せのスタイルを変える)”。幸せの形、サイズの転換を訴えます。

そして、永濱さんの意見は"早く買う”。「全てにおいて物価が上がる世の中になってきたので、欲しいものは早く買わないと価格が上がってしまう。さらに、物流の問題も出てくるから早く買わないと早く届かない。そして、とにかくお金は使うべき」と主張していました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

© TOKYO MX