魔のアイスバーンでタイムロスの勝田貴元、ターゲットを日曜に変更。最終日のスパートに賭け温存へ

 2024年シーズンのWRC世界ラリー選手権開幕戦『ラリー・モンテカルロ』は、1月26日(金)に競技2日目のデイ2が行われ、前日に総合トップに立ったTOYOTA GAZOO Racing WRTのエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が首位の座を守った。

 デイ2で3度のステージウインを達成したセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、エバンスから4.5秒差の総合2番手に。同じくトヨタGRヤリス・ラリー1を駆る日本人ラリードライバーの勝田貴元とアーロン・ジョンストンのペアは、首位と6分56秒差の総合12番手でラリー2日目を終えている。

 第92回の開催を数えるWRC伝統の一戦『ラリー・モンテカルロ』は、前日にモナコ中心部で行われたセレモニアルスタートで開幕し、デイ1ではフランスの山岳地帯で2本のナイトステージが行われた。

 迎えた競技2日目の“フルデイ”初日は、サービスパークが設置されている南仏ギャップ周辺の山岳地帯で、3本のステージをミッドデイサービスを挟んで2回ずつ走行するスケジュールが組まれた。計6本のステージの合計距離は105.72kmで、戦いの舞台がデイ1よりもさらに北側のエリアに移動したこともあり、ターマック(舗装路)のステージにはアイスバーンや雪が残るセクションが増加している。

 さらに、一部のコーナーではインカット走行によって路肩からかき出された泥や砂利が路面に広がり、非常に滑りやすくトリッキーなコンディションとなった。

 デイ1で2本のベストタイムを記録し、15.1秒のリードを築いて首位に立ったエバンスは、安定した走りでデイ2を走行。ミスを回避しながらもすべてのステージで2、3番手タイムを刻み、総合トップの座を堅持している。

総合首位につけているエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2024年WRC第1戦ラリー・モンテカルロ

 一方、デイ1終了時点ではエバンスと21.6秒差の総合3番手となっていたオジエは、地元の山岳ステージで本領を発揮。今朝2本目のSS4で今大会初のトップタイムを記録すると、続くSS5では2番手タイムのエバンスに11.2秒差をつけて連続ステージウイン。これで総合2番手にポジションアップし、さらに日没後のナイトステージとなったSS8も最速タイムで走り抜け、エバンスとの差を4.5秒に縮めてデイ2を締めくくった。

■凍結路でコントロールを失いコースオフ

 デイ1で総合6番手につけていた勝田は、デイ2のオープニングとなったSS3の凍結エリアで足下をすくわれ、道路脇の雪溜まりにスタック。スタートから約8km地点にある同地点では、ライバルのオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)やグレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマ・ラリー1)らもコースオフを喫しているが、落輪の程度が大きかった勝田は、観客の助けを借りてコースに復帰するまでに5分以上を要し、総合19番手まで順位を下げてしまった。しかし、その後のステージを勝田は5、6番手タイムで走行。総合12番手まで順位を挽回してデイ2を終えている。

 ヤリ-マティ・ラトバラチーム代表は、「エルフィン(・エバンス)もセブ(セバスチャン・オジエの愛称)も、今日はとてもいい一日だった」と総合首位を争うふたりについて振り返った。

インタビューに応えるヤリ-マティ・ラトバラTGR-WRT代表 2024年WRC第1戦ラリー・モンテカルロ

「朝はエルフィンの方が強かったと思うが、そのあとセブが追い上げたことで差が縮まった。総合3番手のティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)もプレッシャーをかけ続けているし、このような接戦状態でラリー3日目を迎えるのは、誰にとってもエキサイティングなことだ」

 また、SS3のアイスバーンでコントロールを失った勝田について、「コンディションは簡単ではなく、路面がドライであればスピードは非常に高くなるが、アイスバーンではどれくらい速度を落として走れば良いのかが分かりにくくなる。残念なことに、(勝田)貴元はそのコーナーでスタックしてしまい、多くのタイムを失ってしまった。彼の現時点でのターゲットはクリーンなドライビングを続け、日曜日にプッシュしてポイントを獲得することだ」とコメントしている。

 SS6終了後のインタビューでは、勝田自身も同様のことを示唆するコメントを述べていたが、ラトバラ代表からも、総合順位争いにおいて大きく順位を下げてしまった彼の今大会の目標は、ラリー最終日のスパートに絞られたことが語られた。それは、2024年シーズンより導入されたポイントシステムに由来するもので、今大会からは土曜日までの総合順位と、日曜日のみの総合順位によってそれぞれポイントを手にすることができるようになっている。

 最大18ポイントを獲得することができるクルー、およびマニュファクチャラーが決まることになる1月27日(土)のデイ3は、ギャップのサービスパークの西側エリアを舞台に、3本のステージをミッドデイサービスをはさんで各2回走行していく。ステージの合計距離はSS9からSS14まで計6本で120.40kmとなっている。リエゾン(移動区間)を含めた一日の総走行距離は504.09kmだ。

モナコ公国のアルバート2世王子と握手するセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2024年WRC第1戦ラリー・モンテカルロ
インタビューに応える勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2024年WRC第1戦ラリー・モンテカルロ
エルフィン・エバンスのトヨタGRヤリス・ラリー1を整備するTGR-WRTのクルー 2024年WRC第1戦ラリー・モンテカルロ
アライメント調整中のトヨタGRヤリス・ラリー1の足回り 2024年WRC第1戦ラリー・モンテカルロ

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