歴史ある「古酒文化」復活の願い込め 丹波篠山の蔵元、15年貯蔵の2千本販売 琥珀色で「独特の甘み」

狩場一酒造が売り出した15年貯蔵の熟成古酒=丹波篠山市波賀野

 「古酒文化を盛り上げたい」と、「秀月」の銘柄で知られる蔵元「狩場一酒造」(丹波篠山市波賀野)が、ワインのように長期熟成させた日本酒の販売を始めた。15年ものの熟成古酒「秀月 熟成大古酒~時の職人~」。琥珀(こはく)のような黄色みを帯びた色合いで、「深く濃醇(のうじゅん)な味わいとなった。一度ぜひ試飲を」とアピールしている。今後さらに熟成させ、20年貯蔵、25年貯蔵の古酒販売も目指す。(堀井正純)

 近年、日本酒業界では、長期保存した「古酒」「熟成酒」が注目されている。県内でも「龍力」の本田商店(姫路市)が熟成古酒専門店を2021年末に開くなど、古酒の生産・販売に力を入れる蔵元が増えつつある。

 「秀月 熟成大古酒」は720ミリリットル入りで7500円。古酒造りは、狩場一酒造の狩場一龍社長が十数年前、さまざまな古酒の試飲をしたのをきっかけに発案した。同蔵元では、1916年の創業以来、古酒の販売は初めてという。

 2008年に醸造し、土蔵造りの酒蔵で、一番温度変化の少ない場所に貯蔵してきた。日本酒は、長期熟成で余分なタンパク質などが澱(おり)として沈み、すっきりとした味わいとなる。

 「10年を過ぎるとかどが取れ、まろやかになった。15年でちょうど飲みごろに。雑味が少なく、独特の甘みがある」とスタッフの岡村寛治さん。神戸の百貨店では、「おいしい」「洋酒みたい」と試飲した客らに好評だったとか。

 芳香も特徴で、岡村さんによると、熟成の過程でドライフルーツやハチミツ、カラメルのような香りが加わるという。

 今回は2千本の限定販売。残りの酒は、さらに長期保存を続ける。「10年後がピークになるのでは。味わいの変化が楽しみ」と岡村さんは期待する。狩場一酒造TEL079.595.0040

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 日本酒は新酒を楽しむものとのイメージが強い。ところが江戸時代には、9年貯蔵した酒など、長期保存の古酒が珍重されたという。実は市場の主流が新酒になったのは明治以降のこと。政府が税制を変え、酒の販売時ではなく、製造時に課税するようになったため、蔵元は酒を蔵に長期保存せず、造ってすぐに売るようになった。

 一度は廃れた古酒文化だが、国税庁は昨年4月、東京で「熟成酒シンポジウム」を開催。古酒造りが各地で活発化することに期待する愛好家らもおり、「海外で評価が高い国産ウイスキーのように、熟成酒も世界へ進出を」といった声もある。

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