あばれる君「自分の尿を…」過酷な冒険エピソード語る 名古屋市科学館「化石ハンター展」でトークショー

あばれる君

名古屋市科学館で2月18日まで行われる特別展「化石ハンター展」。開催を記念して、お笑い芸人のあばれる君と、総合監修を務める木村由莉先生(国立科学博物館 地学研究部生命進化史研究グループ研究主幹)によるトークショーが行われました。

木村先生は、日本だけでなく海外でも化石発掘を行う“リアル化石ハンター”。化石発掘の舞台裏や、あばれる君の過酷な冒険エピソードに会場も大盛り上がりでした。(聞き手:長江麻美/テレビ愛知アナウンサー)

化石が見つかる瞬間は超ドラマチック! 化石ハンターはやめられない

木村由莉先生とあばれる君

あばれる君:“冒険家”と聞くと、一獲千金みたいなイメージが。化石を見つけて「お宝!」となることありますか?

木村:あります! この前、九州で発掘しました。まず、海岸と地形図を見ます。地形図で岩が露出したようなマークがあったら、そこに丸をつけるんです。そして、車でその場所に行って「見つかるかな」というのを繰り返し行います。もちろん、空振りになることも多いです。発掘のときは最後の時間、最終日の「そろそろ夕方になるぞ」というときに見つかることもあるんですよね。

あばれる君:すごい!

木村:九州で発掘した骨がまさにそうでした。

あばれる君:最後、諦めなかったからですね! これだからやめられないと。

化石ハンターにとって大切なことは?

――今回は事前に、あばれる君と木村先生に「化石ハンターにとって大切なことはどんなことですか」という質問をしました。

●あばれる君の回答
「体力」「仲間との連携」「探究心」

●木村先生の回答
「継続できる心」「仲間をつくる力」「堆積物を見極める目」

あばれる君:先生と似ていますね。

木村:一緒じゃないですか!

あばれる君:僕は高校時代に登山部だったので、4泊5日で夏山にこもりました。すると、ギスギスしてくるんですよね。そういった場面で、どうやって思いやりを持って接するかが鍵になってくると思います。

木村:その通りだと思います。

あばれる君:発掘に行くとき、テントは1人1つですか?

木村:1人1つです。

あばれる君:そうですよね。プライベートの空間が1つないと大変です。

――仲間の連携が大切だと思う瞬間は、これまでにもありましたか?

木村:私の場合は、そんなに体力がある方ではないので、みんなと同じように岩石を運ぼうと思ってもできません。チームの中で何ができるのか考えて、自分ができることに集中してやるとか、それも仲間をつくって連携することの1つだと思います。

あばれる君:ロールプレーイングゲームと一緒ですね。剣士や魔法使い、格闘家がいて、自分の得意分野を生かすみたいな。あと「探究心」は「継続的できる心」と似ていると思いました。

探究心が全ての古生物学者

あばれる君:全ての古生物学者のエネルギーは探究心だと思うんです。不思議な生き物を見せてもらうときの先生たちの目がまっすぐで、何十年も真剣に取り組んでいますよね。すごいですよ。その情熱がないと無理だなと。

――見つけるまでにはかなり時間もかかりますしね。

木村:この前行った発掘は、5日間のうち2日間は完全に移動だけという日程でした。中3日で骨が見つかったのは1つだけ。しかも、その中で見つかった骨は決してきれいな状態ではありませんでした。それでも大切なことと思えて「研究してみたい」と近づけるのは、探究心だと思います。誰かにとってはただの石かもしれない。でも、もしかしたら、何か生き物の面白い情報が入っているのではないか?と。

冒険生活は超過酷! トカゲはトイレの味?

これまでの冒険で大変だったエピソードを語る

――あばれる君はサバイバル関連の番組やイベント、トークショーなどにも出演していますね。これまでに大変だったエピソードについて教えてください!

あばれる君:以前、大きいトカゲを捕まえて、皮を剥いで焼いて食べたことがあります。そのトカゲを食べたらジュワッ、ジュワッと泡が出てきたんですよ。トイレの味がしました。

たぶん、死体などをそのトカゲが食べているんじゃないかな、と思いました。その味がうつっているのではないかと思ったんです。あまりおいしくありませんでしたが、貴重なたんぱく質としていただきました。

――その環境下ではたんぱく質ということですか。栄養として食べるのですね。

あばれる君:そうですね、二度と食べたくはないです(笑)

銃を持った人と発掘に!

――木村先生はこれまで大変だったエピソードはありますか?

木村:発掘の助手でエチオピアに行きました。その場所は危ないからと、拳銃やライフルを持っている人たちと一緒に行動するような環境でした。

あばれる君:怖い。動物もいますよね。

木村:そうです。そのとき1人でテントにいたら野生の犬がやってきて、テントの上から噛まれたことがあるんです。

とてもびっくりしました。当然、狂犬病の注射をして向かいました。噛まれた瞬間に手を離せられたから良かったです。それはかなり印象に残っているエピソードです。

――常に危険と隣り合わせですね。

化石ハンターを悩ませる「飲み水」問題

あばれる君:木村先生はハードな経験をされていますが、飲み水に困ったことはありませんか?

木村:飲み水はかなり困ったことがあります。結構、お腹を崩しています。

あばれる君:フィリピンの島から脱出するときに、ものすごい長い時間いかだを漕ぐんです。でも、本当に喉が渇いてきたので危ないと思いました。命の危険を守るために必ず見守ってくれている並走船に向かって助けを呼ぼうと思いましたが、喉が引っ付いて声が出なくなってしまったんです。

あばれる君:仕方がないので、自分の尿でちょっと喉を湿らせて声を出しました。

木村:それは極限ですね……。

あばれる君:その後、ちゃんと手当をしてもらいました。さすがにテレビでは放送されませんでした(笑)

木村:お酒を飲んでいたら、お酒でアルコール消毒ができるみたいです。

あばれる君:えっ? お酒で消毒できるんですか?

木村:チームの中で私だけが飲めませんが、自分だけお腹を壊すことがよくあるんですよ。病院に駆け込んだことが2回ありますが、やはり水が原因でした。

あばれる君:冒険家だとスキットルという、小さなボトルにウイスキーを入れて少しずつ飲んだりするイメージがありますが……消毒しているのか、あれ!

木村:意外と理にかなっていると思います。入院すると2日から3日は動けなくなるので、もったいないんですよ。

あばれる君:入院したら、次は呼ばれるんですか?

木村:次は呼ばれないです。エチオピアは2回目、ありませんでした。

あばれる君:厳しい世界ですね。バラエティーもそうですよ! スベったら呼んでもらえない(笑)

化石ハンターは実は「トイレ」が助かる

――発掘に行くときは体調管理を自分でする必要があるとのことですが、過酷な状況での体調管理は難しくないですか?

木村:難しいです。ただ、ハンマーを持っているので、本当にお外でしたいときには良いところがあるんです。自分で掘って、その場でできるから。そういった意味では、化石ハンターは良いですね。

あばれる君:何を言っているんですか! そこら中にトイレがあるだけですよ(笑)

――それだけの極限状態ってなかなか経験することないですよね。

あばれる君:小柄に見えますが、パワフルですね!

木村:ほかに手がないですからね。

――化石ハンターになりたい、あばれる君みたいにバラエティー番組のサバイバルでがんばりたいという人は、まず体力作りが大切なのでしょうか?

あばれる君:そうです。

木村:大切ですね。

会場にいた子どもたちから質問!

トークショーを聞いていた子どもたちから、恐竜や化石について質問がありました。

【なんで昔は、恐竜みたいな生き物がいたの?】

木村:もしかしたら「なんで絶滅してしまったの?」と同じ意味の質問かもしれないですね。恐竜の場合は、隕石で絶滅したかもしれないといわれています。でも、マンモスはどうでしょうか。マンモスは1万年ぐらい前までは、普通に生息していたのに、今はいません。マンモスの場合は、地球環境のせいだけではないと考えられていて、もしかしたら人が狩猟で絶滅に追い込んだかもしれないともいわれています。「なんでそういうことが起こったのか」疑問に思うことはとても大事です!

あばれる君:隕石がぶつかったから恐竜いなくなったかもしれない。信じられる? どんな隕石がぶつかったのですか?

木村:直径10キロメートルぐらいといわれています。

あばれる君:たった直径10キロの隕石がぶつかって、地球上の恐竜がいなくなったんですか?

木村:そうです。ぶつかった衝撃がものすごいんです。それによって、地球全体が塵に囲まれてしまい、太陽が見えないような状態が出来上がったんです。それだけでなく、隕石はユカタン半島に落ちたのですが、ものすごい衝撃波によって波が起きています。津波が地球の反対側へ到達したことも分かっているんです。その形跡が、堆積物として残っています。

あばれる君:宇宙はものすごく広い。宇宙に比べたらほんの小さな地球に隕石が当たることはありえたのですね。

木村:しかもちょうど恐竜がいた時代にという。たまたまね。

あばれる君:巡り合わせですね。それがあって人間がいる。しかも今では地球の裏側までメールやLINE、電話までできるのは不思議ですね。

【なんで恐竜の化石は土の中に埋まってるの?】

木村:良い質問です! 土の中に埋まっているものが地表に出たときに人が発見して、それでようやく“化石”と知られます。これは偶然のタイミングで、そもそも死んだ動物がずっと地表に残っていたら、誰か動物がやってきてその肉を食べたり、小さな虫が食べたりしてしまう。比較的早く土の中に埋まらないと、化石にはならないんです。ただ、そのまま埋まりすぎても誰にも発見されないまま時間が経過してしまうので、ちょうど良いところにいなくてはいけないんです。

あばれる君:ちなみに石油は化石なんですか?

木村:石油も化石です。

あばれる君:骨が溶けたものが化石になっているのですか?

木村:骨ではありませんが、石油みたいなものも化石になりますね。小さな動物がたくさんたまったものが、熱で形が変わり石油になります。

あばれる君:すごくないですか。車やストーブの燃料となる石油も化石。ということは、石油はいつかなくなってしまうんですか?

木村:そうですね、一応なくなってしまうようです。

あばれる君:1億年とかかけて作ってきたものを、我々が短時間で消費しているかもしれない。そういうことを考えないといけないですね。

リアル化石ハンターとして世界中を冒険する木村先生と、バラエティー番組で数多くのサバイバル・冒険を経験してたあばれる君。違う分野で活躍しながらも「冒険」という共通項を持った2人のトークは、時間内では収まりきらないぐらいの大きな盛り上がりを見せました。

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