体調不良の子、病院ちゅうちょ…風邪の治療だけで数万円 不安だったクルド人ら、ようやく“在特”が付与され始める「やっと普通の人間に」 犯罪歴ないなど条件…付与対象の子、対象外の子「勝手な線引きで明暗が分かれぬように」

これからの生活に対する希望を語る30代のクルド人男性(右)ら=7日午後、川口市

 日本で生まれ育ちながらも在留資格がない外国籍の子どもとその家族に人道的配慮の観点から在留を認める「在留特別許可」(在特)が、埼玉県内の対象者にも付与され始めたことが分かった。入管施設への収容を一時的に解かれた「仮放免」のクルド人らは「やっと普通の人間になれた」「夢をかなえられる」と喜ぶ。一方、条件を満たせず在特が得られないクルド人もおり、支援団体は在特の有無にかかわらず、不安定な生活を強いられている子どもたちが安心して暮らせるよう行政に支援を求める。

 昨年6月、難民認定申請を原則2回までとし、3回目以降は申請中であっても強制送還させることを可能とする改正入管難民法が成立した。強制退去処分が出ても帰国を拒む送還忌避の外国人への対応が厳しくなった一方、日本で生まれ育ち自国での生活が困難な子どもの人道的救済のため、同8月に法相の裁量で学校に通う児童生徒や親に犯罪歴がないことなどを条件に在特付与の方針が示されていた。

 出入国在留管理庁(入管庁)によると、在留資格がない送還忌避の外国人のうち日本で生まれ育った18歳未満の子どもは昨年末時点で201人おり、今回在特が付与されるのは全国で140人程度になる見通し。在日クルド人の支援団体「在日クルド人と共にHEVAL」の調べでは、県内の複数のクルド人家庭に付与され始めているという。

 「働いて家族を養えるのがうれしい。これから安心して生活できる」。川口市で暮らす30代のトルコ国籍のクルド人男性は交付された在留カードを手に笑顔を見せる。妻といずれも日本生まれの小学2年生の長男、3歳の次男との4人暮らし。家族全員が仮放免で、就労や県外への外出ができなかった。健康保険証がないため医療費の自己負担額も大きい。男性は子どもが体調を崩した際、ちゅうちょしながらも病院に連れて行っていたが、風邪の治療だけで数万円かかっていた。

 小学校に通う日本生まれの弟2人を持つ同市の20代クルド人男性も父母と共に資格を得て「今まで不安を抱えて生きるのが当たり前だった。大げさかもしれないけど、やっと普通の人間になれた」と喜ぶ。男性は小学生の時に来日した。サッカー選手になる夢を持っていたが、仮放免という不安定な立場から断念。今回、資格を付与されたことで同じ夢を持つ弟は諦めなくて済む。

 大学で難民問題を研究し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)への就職を目指す男性は「かつての自分のように、不安定な生活状況で夢を持つことができない人々が皆、人権を保障される国際社会をつくりたい」と意気込む。

 在日クルド人と共にHEVAL代表の温井立央さんは在特の付与を歓迎しつつ、条件を満たさず付与対象にならなかった子どもも同じ学校に通い、同じ風景を見て暮らしている現状を憂う。「勝手なライン引きで両者の明暗が分かれるようなことはあってはいけない。子どもの権利条約などに照らし合わせて、全ての子どもが安心して生活できるよう求めていきたい」と話した。

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