川合孝汰、2024年に向けさまざまな方向を模索。「乗れる場所を作って来年に活きるようにできれば」

 1月10日、TOYOTA GAZOO Racingは、2024年のスーパーGT GT300クラスに参戦するトヨタ/レクサス車の9台の陣容を発表したが、このなかで最大の驚きともなったのが、2023年に埼玉トヨペットGB GR Supra GTを駆りチャンピオンを獲得した川合孝汰の名が、2024年のGreen Braveのシートになかったことだ。チャンピオンの翌年のドライバー変更は異例とも言えるが、川合に2024年に向けた状況を聞いた。

 川合は2015年に四輪にステップアップ。ル・ボーセモータースポーツからスーパーFJやFIA-F4を戦い、現在トップカテゴリーで活躍するライバルたちと切磋琢磨してきた。そんななか、2019年限りでル・ボーセは活動を終えることになったが、2020年には埼玉トヨペットGreen Braveに抜擢され、コロナ禍によりスケジュールはずれ込んだものの、初年度からスーパーGTでは2勝を飾りランキング2位に。スーパー耐久でも大活躍をみせた。

 その後も吉田とのコンビでGT300クラスのトップドライバーとして活躍。2022年には、自らのキャリアの今後を考え、スーパーフォーミュラやGT500へと繋げるべく資金を集めスーパーフォーミュラ・ライツにも挑戦した。そんな活動も実り、2023年にはGT300クラスで悲願のチャンピオンを獲得した。

 ただ、2024年に向け発表されたGreen Braveのラインアップは、吉田と2023年途中から第3ドライバーを務めた野中誠太というふたりで発表された。現在のところ、他のGT300チームのラインアップの中に川合の名はない。

 そんななか、川合は1月12日に幕張で行われたスーパー耐久シリーズの2023年表彰式に埼玉トヨペットGreen Braveの一員として登壇した。チームの青柳浩監督にも話を聞くことができたが、今季川合を起用しないことについては、特にスピードや経験に不足があったわけではなく、あくまでチームの方針だという。野中はFIA-F4チャンピオン経験者でもあり、スーパーGTでの経験、そしてスピードもある。チームとしてもぜひ起用したいドライバーであり、川合と野中のどちらを選ぶかは苦渋の決断となったようだった。

2023スーパーGT第8戦もてぎ 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)

■「今のところは厳しい状況」

 今回の決定について、スーパー耐久の表彰式に出席した川合に聞くと「僕はチームで3年間やっていたので、3年を1クールと考えると、吉田さんと僕のキャリアを考えると、動くのは僕だろうと思ってはいました。だからこそ2022年にスーパーフォーミュラ・ライツに乗ったんです。僕はGT500でやりたいですし、あわよくばそこから海外に出て、そこでプロとしてやりたいと思っていました。いろんな先輩方に相談したところ、やはりライツは必要だということだったので、なんとか資金を集めてやったのが実情です」という。

 結果的に川合はスーパーフォーミュラ・ライツの経験も糧にしつつ、チーム在籍4年目となった2023年も埼玉トヨペットGreen Braveの一員として戦い、GT300クラスチャンピオン、スーパー耐久ST-Zクラスチャンピオンという称号を得ることができた。ただ、2024年に向けてレギュラーのシートを得るためには、「緊急で動いて、今も動き続けていますけど、何かかたちになりそうなものが今のところはあるか? と言われると、厳しい状況ですね」と現段階の状況を語った。

 しかし一方で川合は、これまで2020年から過ごしてきたGreen Braveへの感謝を語った。「自分がFIA-F4で所属していたルボーセ・モータースポーツが活動を終えることになって、その時に拾っていただいたのが埼玉トヨペットGreen Braveさんでした。そこからスーパーGTもスーパー耐久も、さらには86/BRZ Raceも戦わせていただいて、環境としてもパッケージとしても、すごく恵まれたなかでやらせていただきました」と川合。

「コロナ禍でのデビューだったこともあってか、知名度がいまひとつ上がってはいないのですが……(苦笑)、世間としては少しはインパクトは与えられたのかな? とは思っています。一概に今までどおりの評価になるかは分かりませんが、フォーミュラで苦しんでいた頃とは逆に、優勝争いをすることができました。この4年間での優勝や表彰台の数で言えばけっこうな数字だと思うので、他のドライバーに引けをとらないと思います」

「“レーシングドライバー川合孝汰”という商品の価値で考えれば、非常に濃い4年間を過ごさせていただいたと思います。その点では感謝しかないです」

2023スーパー耐久第1戦鈴鹿のST-Zポールを獲得した山﨑学/吉田広樹/服部尚貴/川合孝汰(埼玉トヨペット GB GR Supra GT4)
2022年スーパーGT第7戦オートポリスを制した埼玉トヨペットGB GR Supra GTの吉田広樹と川合孝汰
2022年にスーパーフォーミュラ・ライツに参戦した川合孝汰(Rn-sports 320)

■シート模索に加え新たなプロジェクトも始動

 2024年に向けて川合は、シートを探しつつ新たなプロジェクトも立ち上げ、前進を続けている。「今年については、ドライバーとしてではなく、チーム監督というか、アドバイザーとして女性ドライバーを応援するプロジェクトを進めています。モータースポーツに興味がないファン層を引っ張っていきたいという思いを一緒にしているオーナーさんとやっていこうと思っています」と、女性レーシングチームの立ち上げにも携わっている。

 また、現在川合はレギュラーシート獲得を最優先として活動している。いずれにしろ、川合は時期が来たら報告すると約束してくれた。

「自分としては、レギュラーで乗ることができる立場ではなくなってはしまいましたが、僕はGT500にも行きたいですし、ギリギリまでレギュラーシートを探していきたいと思います。現状では何かお伝えできることはないのですが、動いているものはあります。かたちになって報告できるようにしたいですね」

また川合は、以前からGT300でスピードをみせた若手がGT500でもチャンスを得られるようにして欲しいという。もちろん、そうしてGT500のシートを得るドライバーも多いが、メーカーの育成ドライバーだけが得られているのが実情だ。

「フォーミュラではないのでステップアップ……と言うべきかは分かりませんが、GT300のチャンピオンを獲ったのであれば、できればテストでも良いので、GT500をドライブするチャンスも欲しかったですし、そうであって欲しいと思います」と川合は言う。これは大いに賛同したい内容だ。

「スーパーGTに限らず、スーパー耐久なのかフォーミュラなのか、他のレースなのかは分かりませんが、何か乗れる場所を作って、それが来年に活きるようにできればと思っています。海外も視野に入れたいと思いますが、まだすべてがフワっとしている状況ですね。でも、前向きに動いているのは間違いないです」

 川合は1月下旬の現在も、スーパーGTに限らずさまざまなカテゴリーのレギュラーシートを探している。現代のGT300は、クルマやタイヤだけでもチャンピオンを獲ることはできない。ドライバーの力が果たす役割は大きいはずだ。その称号を得た川合が将来に繋がるシートを得る日を願ってやまない。

2023スーパーGT第8戦もてぎ チャンピオン会見に出席した川合孝汰(埼玉トヨペットGB GR Supra GT)

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