小学校の大きな古時計、突如「ボーン」と響く 20年ぶりの目覚めは能登半島地震きっかけか

小学校玄関近くに設置されている「大きな古時計」(滋賀県草津市草津3丁目・草津小学校)

 学校のシンボルながら何年も止まっていた草津小学校(滋賀県草津市)の「大きな古時計」が、冬休みの間に突如、動きだした。学校関係者は1月1日の能登半島地震が影響したと見ており、阪神大震災の時期に合わせた避難訓練で再始動を児童に伝えた。同小学校は「ずっと捨てられずに草津小学校を見守ってきた古時計がよみがえったのは、意味のあること」として、被災地に寄せる思いと学校の防災体制に対する意識を新たにしている。

 同小学校によると、時計は約70年前の1953年に、創立80周年に合わせて地元の時計店から贈られたものだといい、直径約90センチ。長く時を刻み続けたとみられるが、同小学校出身の若手教員の記憶では約20年前には止まっていたという。修理をしようにも業者に「もう動かない」と言われ、針の止まった時計は学校の歴史を伝える役割に徹してきた。現在は1階玄関近くの壁に掛けられている。

 その時計が動いているのが発見されたのは、仕事始めの1月4日。出勤していた教員らが、突如、静かな廊下から「ボーン、ボーン」と音が響いたのを聞いた。9日の始業式まで日数があった校内はざわめきに包まれたといい、中村真理子校長は「何か夢の中にいるような…。空耳なのかと思った」と振り返る。

 同小学校によると、古時計は仕事納めの昨年12月28日には止まっていた。能登半島地震は1月1日午後4時10分ごろに発生し、草津市でも震度3を観測。中村校長は「原因は地震しか考えられない」と推測する。

 時計の針は9日の取材時点で、正しい時刻より5時間10分ほど進んでいた。時計は昨年まで「9時25分」を指して止まっていたといい、1日の地震を機に動き始めたとすれば、約5時間10分のずれはつじつまが合う。

 避難訓練は、29年前に阪神大震災が発生した1月17日に近い19日に行った。中村校長は「時計が『能登半島の皆さんのことを考えて』『草津小学校も何があるか分からない。きちんと防災の備えを』と教えてくれているのかもしれない。被災地に心を寄せて何ができるかを考えようと伝えたい」と語った。

 ちなみに今後、時計の針を合わせる予定はあるのか。中村校長は「時間を合わせる時に止まってしまうかもしれない。このまま大切に見守りたい」と話した。

© 株式会社京都新聞社