南海トラフ地震に備え「津波警戒区域」初指定へ 兵庫県 避難場所に有効な高さ「基準水位」を明示

兵庫県庁の庁舎=神戸市中央区下山手通5

 近い将来の発生が懸念される南海トラフ巨大地震に備え、兵庫県は避難対策の強化を促す「津波災害警戒区域」を初指定する方向で検討している。指定区域では最大クラスの津波による浸水想定を基に、避難場所に必要な高さの目安となる「基準水位」を10メートル四方ごとに明示。該当の市町は迅速な避難を求める福祉施設や病院、学校などを指定し、地域防災計画を見直す。

 同警戒区域は東日本大震災後に施行された「津波防災地域づくり法」に基づく制度。人的被害などを最小限に抑えるため、知事が避難体制を特に強化する区域を指定できる。

 国土交通省によると、昨年12月時点で津波被害の恐れがある40都道府県のうち、26道府県が警戒区域を指定した。国は南海トラフの被害想定を見直しており、兵庫県はこの動きに同調。最新の地形や地質、土地利用の状況を加味して、新たに浸水シミュレーションを行う。市町側の意見も確認し、2024年度から2年をかけて取り組む方針。

 警戒区域指定で示される基準水位は、想定される浸水深に、津波が建物などにぶつかった際のせり上がりを加えて計算するため、避難場所として有効な高さが明確になるという。

 警戒区域に入った市町は、避難先となる民間施設と協定を結ぶなどし、ハード対策も含めた推進計画を策定。迅速な避難を求める「避難促進施設」に指定された病院や学校には、個別の計画づくりが義務付けられる。区域内の宅地や建物を取引する際は、重要事項として説明が必要となる。

 特に危険性の高いエリアは「特別警戒区域」に指定でき、一定の開発行為や建築などが制限される。現在、指定されているのは静岡県伊豆市のみという。

 兵庫県が13年度に公表した現行の津波浸水想定では、大阪湾や播磨灘沿岸の15市町で被害が生じ、南あわじ市には最大8.1メートルの津波が押し寄せるとされる。県は「津波から命を守るには素早い避難が欠かせない。見直しや指定を通じて意識を高めたい」としている。(田中陽一)

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