全国の支援者の皆さんへ 能登弁知ってね 本社記者座談会

なとみみわ作「のとはやさしや」の一場面

 能登半島地震の被災地に、全国から多くの医療チームやボランティアなど支援者が訪れています。しかし、能登には独特の方言があり、同じ石川県民でさえ分からない表現も。被災者の訴えや気持ちを正しく理解し、誤解を防ぐために、能登出身の北國新聞記者が能登弁を紹介します。

 A 地震でわやくそ(むちゃくちゃ)になった故郷をみるのはつらい。けど、避難所を取材で回ると、懐かしい能登弁が聞こえてきて、ほっとするね。

 B 寒むないですか?と、おばあさんに声をかけたら、「なっとない」と言われたよ。

 C 大丈夫、心配ないという意味やね。他県の記者さんには、意味が分からんかも(笑)

 D 避難所の様子を描いた本紙4コマ漫画「のとはやさしや」も能登弁がふんだんに使われとるね。

 A 作者のなとみみわさんは能登町出身やから。「もっしょいな」というせりふもあったけど、金沢本社のデスクがどういう意味だ?と騒いどったよ。

 B え、分からん? 「面白い」「おかしい」「不思議」の意味や。

 C 能登の人は感情表現が下手なところがあるけど、気持ちを示す方言はいろいろあるね。

 A 「うざくらしい(うっとおしい)」「あへんない(気恥ずかしい)」「へしない(たいくつ)」「やねこい(しつこくて嫌)」とか。

 C 同じ能登でも地域によってニュアンスが、ちごー(ちがう)けどね。

 B 動詞もいろいろ。「ねまる(座る)」「いくす(よこす)」「かやる(転ぶ)」「よぼる(呼ぶ)」「たーしる(あげる)」「ほーかす(捨てる)」は、お年寄りがよく使うよね。

 D 全国から多くの医療支援チームが来ているけど、ぜひ知っておいてほしいのは、体調不良を訴える言葉かな。

 B 「ちきない」「たいそい」は、いずれも「疲れた」「しんどい」という意味やから、よく診てあげてほしいですね。

 C つらいのに、遠慮して「だんない(なんでもない)」と言ったり。我慢強い人が多いから。

 A 長い避難生活で疲れとる人は多い。「たいそしたねー(大変な思いしたね)」と声を掛けてあげてほしい。能登の人は実はおしゃべりが好きや。

 B 弁当を配る炊き出しの人が「まんでまいよ(とてもおいしいよ)」と言って渡してた。能登の方言を覚えて使ってくれるのはうれしいよね。

 C 方言一つでぐっと距離が縮まるからね。使いこなすのは難しいけど、被災者の話に耳を傾け、「ほんながけ(珠洲では、ほんなんきゃ)」と共感してくれるだけでもいい。

 D ボランティアに行くと感謝と恐縮を込めて「きのどくな」としょっちゅう言われると思う。「なんも、なんも」って笑って返してあげて。

 B 「能登は、なっとない。だいないさけ」と早く言える日がこんかねえ。

 A べんこちびっとっても(理屈をこねていても)、だちゃかんし(どうしようもないし)、はよ取材いかんけ。

 D あんたどこの人? 同じ能登でも全く分からんわ。全国の皆さん、会話で苦労かけるかもしれんけど、私らのふるさと、よろしくね。

能登のことば

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