「くすりの富山」に打撃 製薬30社程度被害か

地震で配管が破損した製薬会社の工場=立山町(前田薬品工業提供)

  ●設備破損で生産減 薬連加盟の半数

 能登半島地震で「くすりの富山」が打撃を受けている。県内の観測史上最大となる震度5強の揺れで、製薬会社は工場設備の破損が相次ぎ、生産休止や一部生産ラインの稼働停止を余儀なくされている。県薬業連合会に加盟するメーカー約60社のうち半数程度が被害を受けたとみられ、各社は出荷への影響を抑えるため復旧を急いでいる。

 アトピー性皮膚炎の塗り薬を生産する前田薬品工業(富山市)は、立山工場の空調やボイラーの配管が損傷し、生産再開まで約3カ月かかる見込み。在庫があり、現状では製品の供給に問題はない。

 空調設備の一部損傷で停止していた富山工場のステロイド専用棟は2月5日に再開を予定。担当者は「立山工場の生産品目を富山工場で代替生産することで安定供給を図る」と話した。

 厳格な品質管理が求められる医薬品の製造では、天井や壁、配管の破損など目に見える被害の把握に加え、強い揺れにさらされた精密機器が地震の後も正常に動くか綿密に点検する必要がある。

 大手のアステラス製薬(東京)は、免疫抑制剤や抗真菌剤を生産する県内2拠点で操業を停止している。このうち富山技術センターは2月中旬までの生産再開を予定し、担当者は「詳しい被害状況は公表していないが、機器の稼働の確認を進めている」と説明。メンテナンスのため1月は停止していた高岡工場は地震に伴う追加の点検が必要になり、2月中の生産再開を目指す。

 操業を再開したものの、通常の生産体制に戻っていないメーカーもある。機能性食品開発のファーマフーズ(京都市)のグループ会社である明治薬品は、富山市内の工場で漏水や設備、器具の転倒、落下が確認された。

 協力会社の支援も得て11日から一部生産ラインで試験運転と生産を再開しており、担当者は「できるだけ早く通常の生産体制に戻したい」と話した。

 富士フイルム富山化学(東京)は抗菌剤を造る富山第1工場(富山市)を今月中旬に再開した。ただ配管の破損による漏水で一部の製剤ラインが稼働しておらず、2月中の完全復旧を目指している。

 県薬業連合会は、被害を受けたメーカーに国などの被災事業者向けの支援メニューを周知し、利用を呼び掛けている。メーカーに加え、配置薬の販売業者も地震の影響を受けている可能性があり、高田吉弘専務理事は「情報収集を進めており、さらに被害が拡大する恐れもある」と話した。

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