待望災害ボラに住民涙 穴水で「ようやくスタート」鳥取から高校生も

災害ごみの運び出しを終えて、住民と記念撮影するボランティア=27日午後2時半、穴水町大町

  ●17歳~60代「もっと応援したい」

 雪が残る静まり返った能登に「こっちの棚、トラックに乗せます」と大きな声が響いた。27日、災害ボランティアの活動が始まった穴水町大町に足を運んだ。「もっと能登を応援したい」と、石川県内外から集まった15人ががれきや家財をトラックに詰め込んでいた。「家がきれいになった。ようやく新たなスタートが切れる」と住民の目には涙が浮かんでいた。(佐内まこと)

 石川県庁で出発式を終えた一行が穴水町さわやか交流館プルートに到着したのは午前9時過ぎ。17歳~60代のボランティアが歩いて向かった1軒目の家には割れた瓦や棚、木の板が無造作に積み上がっていた。

 鳥取県から前日に石川入りして、がれきを運んでいたのは高校2年の田中柚希(ゆずき)さん(17)。2021年に静岡県熱海市で起きた土石流災害でもボランティアに励んだ。「報道で被害の大きさを知り、両親の了解を得て来ました。被災者の人の『ありがとう』にもっと能登を応援する気持ちが湧いた」と話した。

 能登ゆかりの県外在住者も寒さに負けず、災害ごみを積み上げた。家財を荷台に運んでいたのは兵庫県加西市の会社員塩河俊洋さん(37)。19、20歳を能登空港に隣接する日本航空大学校で過ごした。

 学生時代の一番の思い出は白米(しろよね)千枚田での田植えで、美しい風景が焼き付いている。友人と舳倉島を訪れたことも。「青春を過ごした能登が変わってしまい心が痛い。ちょっとだけでも役に立てるよう、これからも参加したい」と語った。

 震災直後から1人で家の片付けを行ってきた有田明子さん(60)方では、10人が散乱した食器や家具を整理した。県立看護大2年の高幸紀心(さきこ)さん(19)=金沢市東長江町=は金沢の1.5次避難所でもボランティア活動した。

 高さんは、ふるさとに帰れるかどうか不安を募らせる高齢者の声に応えたいとの思いで参加したといい、「地元に帰らせてあげられるよう少しでも力になりたい」と話した。

  ●「感謝しきれん」

 ボランティアと一緒に約1時間半の作業を終えた有田さんは「本当にありがたい。感謝してもしきれんわ」と何度も頭を下げた。

 ボランティアからは「また参加したいが、申し込みが多くてなかなか登録できない」との声も聞かれた。地震発生から間もなく1カ月でようやく始まった災害ボランティア。冷たい雨の中、住民やボランティアが時折見せる笑顔に心が温かくなった。

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