[社説]米軍の降下訓練 例外規定撤廃しかない

 合意の軽視は明らかである。政府は米軍に対し強く抗議すべきだ。

 米軍は先月19日と今月19日、2カ月連続で嘉手納基地でのパラシュート降下訓練を実施した。

 降下訓練は1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、読谷補助飛行場から伊江島補助飛行場に移転された。

 基地周辺自治体と県が訓練中止を求める中、2020年7月以来3年半ぶりに嘉手納での訓練を強行した。

 米軍は伊江島の滑走路の状態が悪くMC130特殊作戦機が離着陸できないとして、嘉手納での訓練は「例外」と説明していた。

 しかし、今月25日には伊江島で訓練を実施していたのである。説明の矛盾は明らかだ。

 住宅地が近い嘉手納での降下訓練は、一歩間違えれば重大な事故につながりかねない。だが合意以降、嘉手納での訓練はこれまでに16回に上っている。

 米軍が「例外」の根拠とするのが07年の日米合同委員会の合意だ。「伊江島補助飛行場の使用が困難で例外的な場合、定期的でない、小規模の訓練は嘉手納基地を使用できる」とした。

 ただ、「使用が困難」とはどういう状態かなど、具体的な運用は米軍の裁量に委ねられているのが現状だ。

 嘉手納町議会は同基地で降下訓練を実施しないことや「例外的措置」の撤廃を求めている。

 政府は、「例外」を抜け道にした訓練の常態化を見過ごすべきではない。

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 伊江島でも民間地への兵士の落下が相次いでいる。

 今回は村への事前通告なく訓練が実施され、フェンスから200メートルほど離れた畑に2人、農道に1人の計3人が落ちた。

 提供施設区域外への落下事故が繰り返される状況を考えれば、伊江島も降下訓練には適さないのではないか。

 降下訓練を巡っては、うるま市の津堅島訓練場水域でも常態化している。定期船や漁船が航行する水域であり、県は安全上の理由から反対している。

 昨年には米連邦航空局の航空情報(ノータム)で事前予告していた終了時間の4分前に訓練時間が延長され、物資が投下された。

 事前通知の形骸化だ。

 県土が狭隘(きょうあい)な沖縄で訓練のルールが守られなければ、県民の命を危険にさらしかねない。

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 今回、木原稔防衛相は会見で嘉手納の訓練に対し「例外的な場合に該当する」との認識を示した。

 政府の米軍追従は明らかで、沖縄の負担軽減に汗をかく姿は見えない。

 米軍統治下の沖縄では降下訓練やつり下げ訓練による住民の死亡事故が相次いで発生した。今も基地と隣り合わせの生活を強いられている住民は、事件・事故に巻き込まれる危険性の中にいる。

 もはや「例外」を盾にした米軍のやりたい放題を見過ごすわけにはいかない。

 政府は嘉手納での降下訓練を全面禁止すべきだ。

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