【桜坂劇場・下地久美子の映画コレ見た?】ゴースト・トロピック 街や人の描写に心動く

スクリーンガイド/ゴースト・トロピック

 最終電車で寝過ごし、終点まで行ってしまった女性が、自宅を目指して夜の街をさまよい歩く。どんな映画かと聞かれたら、たったこれだけの短い言葉で収まってしまう。

 でも、映画が始まった途端、ベルギーのブリュッセルの街へ心は連れていかれ、雨上がりの匂いのする、寒くて暗くて寂しい冬の夜道を、主人公のハディージャと共に歩くうち、街の匂いもしてくるし、街に暮らす人々の物語までが体に染み込んでくる。

 都会から離れた終点の寂しい街並みの中にも、働く人がいて、家の外に出ている人もいて、道すがら、すれ違う人々と少しの会話と、少しの情を交わすハディージャの人柄が見えてきた頃、ブリュッセルの街中に彼女はたどり着き、朝日の気配のする美しい空が映し出される。

 ベルギーの新鋭バス・ドゥヴォス監督が世界に注目されるきっかけとなった作品。(桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場で2月4日に監督舞台あいさつの先行上映。本公開は3月

© 株式会社沖縄タイムス社