年金支給額2.7%引き上げ、でも手放しで喜べない理由は? 今からできる老後の備えは? 専門家が解説

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。1月25日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「新年度の年金支給額 2.7%引き上げ」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。

※写真はイメージです

◆年金支給額は増加、しかし「簡単には喜べない」?

2024年4月から改定される年金額が、厚生労働省より公表されました。自営業者らが受け取る「国民年金」は、68歳以下は1,750円増え、月額6万8,000円(※1人分)になります。
(※)国民年金の保険料を40年間納めた満額支給の場合。69歳以上は1758円増の月6万7,808円。

「厚生年金」を受け取る夫婦2人のモデル世帯で、前年度から6,001円増の月23万483円(※2人分)となり、2.7%の引き上げとなっています。
(※)平均的な収入(賞与を含む月額換算で43万9,000円)で40年間働いた夫と専業主婦のケース。

物価高がまだ続いているなか、年金の増額は助かると思いますが実際はどうなのでしょうか?

ユージ:2024年度の年金支給額2.7%の引き上げですが、塚越さんはこの数字をどう見ますか?

塚越:簡単には喜べない話です。年金支給額は、物価や賃金の変動に応じて、毎年4月に改定されるものです。2024年度は、物価賃金上昇を受けて2.7%引き上げ。2年連続の引き上げで、伸び率は1993年度以来で最も高くなりました。実際の手取りは、個々の状況によりますが、数千円増えると考えていいかと思います。

ただ、支給額は増えて良いことだと思うのですが、物価などを考慮すると実質的には目減りになるので、ここが大事です。これには理由があり、2004年の年金改革で導入された「マクロ経済スライド」という、年金の給付水準を物価や賃金上昇率より低く抑える仕組みが発動されるからです。

年金を受け取る人が67歳以下か68歳以上かなどで計算方法が異なるのですが、今回は過去3年間の名目賃金上昇率3.1%から0.4%低く抑えて、支給額は2.7%の増加にとどまることになりました。

つまり、手取りは増えるわけですが、社会的には賃金や物価はそれよりも高くなっているので、実質的には手取り額が目減りするということです。

◆物価・賃金上昇率よりも年金支給額の引き上げ率が低いのはなぜ?

ユージ:なぜ、マクロ経済スライドを発動する必要があるのでしょうか?

塚越:マクロ経済スライドは、年金の給付額を物価や賃金上昇率よりも抑えるというものですが、年金財政が長期的に安定することを目的にしています。日本は少子高齢化の影響で、年金受給者は増える一方で、現役世代は減っていきます。

そのなかで、現役世代の負担が大きくなりすぎないように、厚生年金の保険料の上限を18.3%に固定して、給付水準を財源の範囲内に抑えようというものです。そうしないと、将来の年金支給額が下がってしまうからです。

一方、マクロ経済スライドは、物価や賃金が伸びないデフレ状態では発動されず、実際に発動したのは2015年度、19年度、20年度、23年度、そして2024年度は5度目の発動ということになり、2年連続になります。

1年だけなら何とかなるのですが、さらに続くと特に年金受給層には厳しいと思います。年金受給層は手取りが下がることに不満がある一方で、現役世代はさまざまな社会保険料が増えていくなかで、さらに負担が増えるのも厳しいという状況です。

また、保険料を支払う現役世代も今後は減っていくので、今後も年金は実質的に目減りしていく見通しです。そこで厚生労働省は、今年5年ぶりに「財政検証」をおこなうので、その結果を踏まえ、年金の給付水準の低下を抑える制度改正の検討を進めているといいます。

◆老後の備えに新NISAは有用か

吉田:少子高齢化の今、老後の資金対策をそれぞれ考えていく必要がありそうですね。

塚越:国の財政政策は重要な議題ですが、個人としてはまず「自分のこと」を考えないといけません。会社員だと一般的には60歳〜65歳で定年を迎えて年金生活になるわけですが、年金だけに頼るのはなかなか厳しいです。

例えば2019年には、65歳以降で30年生きるには、夫婦で年金以外に2,000万円の資金が必要と金融庁が試算した「老後2,000万円問題」が話題になりました。最近では、さらに、ある程度余裕のある暮らしのためには、定年後夫婦で3,000万円以上が必要と言われるようにもなってきました。物価高や年金の減額、コロナのようなさまざまな疫病など、不安を挙げればきりがないとも言えます。

ユージ:政府は、個人所得を増やすために「貯蓄から投資へ」というものも打ち出していますが、投資は老後の資金対策になりそうですか?

塚越:このスローガンを掲げて、非課税投資額が1,800万円まで(※保有限度額)の新NISAが今年1月から始まっています。個人での投資も増えてくるわけで、日経平均株価も高くなってきているかなと思います。

自分で自分を守るために投資をすることも必要だと思うのですが、投資の場合は株価が下がることもあります。金融リテラシーが必要になるわけですので、投資をやる・やらないは別にして、個人でもある程度勉強しておくことが大事です。勉強をしないにしても、個人の資産防衛という観点で「こういう選択肢がある」と知っておくことは必要です。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ

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1月25日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2024年2月2日(金) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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