マドリードでのF1スペインGP開催決定により、市街地コースが増加。歴史ある常設サーキットの未来が問われる

 マドリードが2026年からF1スペインGPを開催し、市内の国際展示施設の周囲に暫定コースが設置されることが確定したからといって、2027年以降バルセロナ-カタロニア・サーキットがF1カレンダーから自動的に排除されるわけではない。しかしバルセロナの契約が切れた後も、スペインが年間2回のグランプリ開催を続ける可能性は比較的低い。

 今週初めの報道のとおり、スペインでのF1の成功はあるひとつの要因にもとづいている。それはフェルナンド・アロンソがどれだけうまくやっているかということだ。オビエド出身のアロンソは、キャリアの絶頂期に母国で大きな人気を博したことから、2008年から2012年までの5年間、バレンシアのマリーナの周囲にストリートコースが設けられてF1が開催された。

 しかし法的な問題が生じて最終的に市長が逮捕されたことでこのレースは消滅し、コースの一部は今では北アフリカからの難民のキャンプ場となっている。そしてスペインの他の都市やサーキットは何年もの間、グランプリの開催計画を立てることはなかった。

2012年F1バレンシアGP フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)

 アロンソがアストンマーティンへの見事な移籍を果たし、2023年にフィールドの先頭集団に復帰したことは、スペインでのF1人気に大きな影響を与えた。今ではマドリードが10年契約を締結したが、アロンソはこれからもこの高いレベルでレースを続けるのか、現在のような驚異的な強さを保っているのか、疑問を抱かざるを得ない。

 彼の熱烈なファンでさえ、その可能性が低いことを認めるだろうし、彼がグリッドにいなければ、スペインでのF1への関心がふたたび急落することは確実だ。バルセロナはグランプリに別れを告げ、素晴らしいコースが失われることになる。リバティ・メディアは、ますますF1を非常設サーキットに持ち込む傾向にあり、今年は24カ所のサーキットのうち7カ所が非常設だ。2026年にはマドリードが加わることで、F1の3分の1は非常設サーキットが占めることになるため、F1における偉大で伝統的な専用レーストラックの未来が問われている。

2023年F1第7戦モナコGP フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)が2位獲得

 バルセロナは、F1を念頭に置いて計画、建設されたフランスのポール・リカールとマニクール、ドイツの2大サーキットであるホッケンハイムとニュルブルクリンク、そしてポルティマオ、イスタンブール、セパンなどのより新しくて壮大なサーキットとともに、ファンにとってますます遠い記憶の産物となり、他の多くのイベントを開催することで生き残るだろう。こうしたサーキットはイベントには事欠かないが、F1という至宝を手にすることはなくなる。

 ほとんどのトップドライバーが同意するが、純粋なF1ファンにすればマシンは常設サーキットで最高のパフォーマンスを発揮する。たとえばバルセロナでは、人間とマシンが完全に限界まで追い込まれるコーナーが少なくとも3カ所(ターン3、9および最終コーナー)ある。そうしたコースを、バクーのロングストレートでの走りや、12カ所ある90度のコーナーのひとつでの強力なブレーキングと引き換えにすることは、優れたマシンと世界最高の20人のドライバーの能力を十分に発揮させることにはならないだろう。しかしそれこそが、このスポーツが目指している方向なのだ。

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